Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

2016-01-01から1年間の記事一覧

真田太平記

池波正太郎原作の漫画で、今は6巻まで出ている。台詞は原作に忠実で、全体的にはなかなかいいと思うのだが、芝居が大きいのが気にかかる。見栄を切ったり、殿様が足を崩して脇息に頬杖ついていたりと、漫画的表現がとてもステレオタイプ。ちょいと残念。真田…

映画 ファンタスティックビーストと魔法使いの旅

ホグワースの卒業生がはるばるNYにやってきた。彼は魔法動物を研究し保護している魔法使いで、ある魔法動物を救うためにこの国に来たのだった。ちょうどその頃、NYの街では、魔法使いの府のエネルギーから生まれるという謎の巨大な力が脅威をふるい、ついに…

映画 スターウォーズ ローグワン

昨年に続いてスター・ウォーズの新作が観られるなんて、なんと幸せなことか。これはアナザーストーリーと位置づけられているが、エビソード3と4をつなぐ物語だ。とても良くできていてとても楽しめた。ダースベイダー卿もその雄姿を見せてくれたし、おなじみ…

映画 この世界の片隅に

この前、「君の名は。」を観たときはストーリーもテンポもよくて、さらにビジュアルの力がすごいと思ったけれど、この映画はまた別の意味でビジュアルの凄さがあった。原作者の漫画のタッチは、やわらかく、パステル調で、詳細に描きこんだりはしない。けれ…

在日日本人

著者の宮本さんはNYで精神分析医を開業していたが、なぜか厚生省の役人にスカウトされ、日本に戻ってきた。さまざまな不合理で理不尽な組織の風土に驚くが、自分がNYで診察した日本人ビジネスマンの症状と重ね合わせて考えてみると、どうやらそれは日本的な…

映画 聖の青春

ずっと一人で自分と向き合ってきた人なのだと思った。 村山聖は実在の棋士。あの羽生名人を何度も追い詰め、29歳で夭折した天才棋士の実話だ。幼いころにネフローゼになり、最後は膀胱がんがもとで短く太い生涯を閉じる。生命の欠片と引き換えに一局一局を戦…

映画 ゆれる

幼いころ仲が良かった兄弟の心の葛藤を描いた映画だ。その兄弟と仲の良かった女性が吊橋から転落する。彼女と一緒にいた兄は自分が殺したと自首する。だが、裁判になるとそれは気のせいで、手を差し伸ばしたが落ちてしまったと自白内容を否定する。兄を助け…

映画 インフェルノ

以前本を読んだので、その舞台となった場所の映像を見たいと思い、映画館に出かけていった。小説とは結末が違うと聞いていたが、1時間30分に収めるために随分省略されていた。原作と映画を比較するのはあまり意味がないが、ラングドン教授の3部作として考え…

映画 半落ち

この映画は以前、海外から戻るときの飛行機の中で見た。森山直太朗の歌が最後に流れるのだが、その歌に圧倒されてしまったことを覚えている。細かなことは忘れてしまっていたので、再度観てみた、 現役警察官の警部がアルツハイマーになった妻を殺害する。頼…

永い言い訳

同時に流れていたはずの二人の時間が、妻の死によって一人の時間になる。過去の誤解やわだかまりも血液が流れるごとく、そのままで時とともに流れていったが、一人生き残った夫は自分が知らなかった妻の思いや言葉やその人となりの断片を、また聞きで手に入…

翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった

翻訳家にはいろんなタイプの人がいるが、大きく分けると大学の先生や研究者の人と、そうした経験は特に泣く翻訳をされている人がいる。金原さんは、前者のタイプの翻訳家。大学教主でありながら、たくさんの本を翻訳されている。それは先生の片手間仕事とい…

終わった人

平積みの本を手に取ると、冒頭の言葉に驚いた。「定年とは生前葬である。」その通りだと思った。それでわかった気になって、本台に戻したのだが、どうやら売れているらしいというので、Kindleで読んでみた。うーん。冒頭の言葉以外にも、「思い出と戦っても…

映画 ナイロビの蜂

録画で観た。本で読んだ方がいい作品だったのかなと思う。というのも、主人公が妻となった女性のことを誤解していたことに、妻が殺された後に気づく、という展開なのだが、映像で観衆をミスリードしようという意図が出すぎていて、「えっ、そうだったの!?」…

いきものがたり

いきものがかりのリーダー水野良樹さんが書いた、彼の眼からみたいきものががり。最近、NHKの番組で映画監督の西川美和さんと対談していたのを観て、彼の話し方や言葉が気になって、この本を手に取った。いきまものがかりというバンドは、最初はその名前に驚…

3月のライオン

単行本はずっと読んでいる。10月からはTVアニメがNHKで始まるらしい。絵柄の可愛さに眼がいきがちだが、この漫画の主題である高校生のプロ棋士が成長していく物語に惹かれるところがある。対戦するプロ棋士たちのキャラクターもうまく描かれているし、将棋の…

ポエムに万歳

小田嶋隆のエッセイだ。ここで言うポエムは、詩とはちがって、独りよがりの夢を滔々と語る詩の形式をなぞった文章のことだ。ある種の広告コピーや自治体などの宣言風文章はこの仲間だ。歌詞の中にも存在するし、路上で色紙に書いて売っている文章やネットの…

容疑者Xの献身

東野圭吾氏の本を読んだのは初めてだった。TVドラマで福山雅治がやっていたガリレオと関連があるようなことは知っていた。天才物理学者が謎解きをするということはわかっていたので、主人公の湯浅学の声が福山雅治の声になった。ストーリーは、母と娘が暮ら…

インフェルノ

ダン・ブラウンの小説。映画公開を前に、読んでみた。「天国と地獄」「ダ・ヴィンチ・コード」も小説を読み、映画を観た。この作家はページ・ターナーで、先へ先へと読み進めたくなる。世界史などで知る幾つかの名所や美術品の名前が頻繁に登場し、その歴史…

高い窓

この小説を読むのは何度めだろう。チャンドラーの小説はどれも大好きで、大学生の頃はペーパーバックも読んだ。あまりにも台詞が素晴らしかったので、原作の英語ではなんと言っているのか知りたかったからだ。今回の村上春樹訳もとても良かった。登場人物そ…

映画 君の名は。

アニメ映画で劇場に足を運んだことがあるのはジブリだけだったけれど、この映画の評判があまりにもいいので行ってきた。面白かった。高校生の男の子と女の子が互いに入れ替わってしまう、というのは大林監督の転校生以来、いくつかの小説や漫画があったと思…

豆大福と珈琲

標題の作品は2014年に朝日新聞に連載されたものだ。その新聞は切り抜いて取ってあった。好きな作家の一人だが、どんなモチーフからでも小説を作り上げる力量に唸らされる。片岡さんと村上春樹の小説を電車や喫茶店で読んでいると自分でも文章を書きたくなる…

李陵・山月記

中島敦を読んだのはいつだっただろう。中学校か高校の時だ。話の中身は覚えていたが、今回再読してそのリズムの良さに驚いた。漢文の趣のある独特な、言い切り型の力強い文体だ。読んでいて気持よく、その語彙の豊かさに唸ってしまう。三代続いて漢学に関わ…

仮面劇場の殺人

あの、密室事件を得意とするディクスン・カーの作品の一つ。これまでに何冊か読んでいたけれど、この本は読んでいなかった。ハードカバーで350ページを超えるのに読ませる本で、探偵小説を貪るように読んでいた学生時代を思い出した。寂れかけた劇場の再出発…

ビビリ

あの人柄が口調を通して聞こえてくるような構成でとてもよかった。好きなことを真剣に極めてきたことと、天狗になった日のこともどん底に落とされた時のことも、今につながっている。どんな経験からも学びを得ている。ビビリだから、慎重になったというのだ…

映画 シン・ゴジラ

なるべく予備知識を持たずに映画館に足を運んだので、すべてが新鮮で面白かった。映画が始まって進行していくまで主役が誰なのかも知らなかったし、わりと我が家の近くに上陸することも知らなかった。それにIMAXで観る映像は凄かった。 最初に目にするコジラ…

デラックスじゃない

はじめてテレビでマツコを見た時、その雰囲気に圧倒されてしまった。オカマだということはわかったが、新しいジャンルだと感じた。それまで見てきたオカマな人たちは、限りなく女性に近づこうとする人たちか、おっさんであることを隠さずオバさん的な女装を…

最強英語脳を作る

英語学習をすすめる本はたくさんあるが、この本は現代を生きる日本人にとって切実でとても納得できる内容だった。英語を学ぶことは英語の考え方(マインドセット)を学ぶことだという。ある種の世界の見方であり、価値観であり、行動様式などの複合体のイメー…

泥棒は詩を口ずさむ

泥棒バーニーの活躍シリーズの一冊。ニューヨークで古本屋を営むバーニーのもう一つの仕事は泥棒。今回も稀覯本をある人物の家から盗みだしてくれれば高値で買うといわれて、見事に本を手にしたが、その本を現金と交換するためにでかけた先で一服盛られ、気…

映画 Too Young To Die

劇場で観た久しぶりの邦画。宮藤官九郎作品という安定した期待値はあったが、それほど多くを望まずにでかけたので結構楽しめた。主人公は神木隆之介演じる17歳の高校生。交通事故で死に、地獄に行くがそこで修行を積んで再び人間に輪廻転生するチャンスをう…

泳ぐのに、安全でも適切でもありません。

江國さんの、タイトルが気になっていたもう一冊を読んだ。こちらも短編集。主人公たちは皆女性で、愛あるいは愛の行為に貪欲で、健全な欲望で楽しむ。そしてそれは刹那ゆえに、完璧な時間になり、その完璧さゆえに、それ以外の人生の時間を見つめなおすきっ…