Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

いきものがたり

いきものがかりのリーダー水野良樹さんが書いた、彼の眼からみたいきものががり。最近、NHKの番組で映画監督の西川美和さんと対談していたのを観て、彼の話し方や言葉が気になって、この本を手に取った。いきまものがかりというバンドは、最初はその名前に驚き、それからまっすぐに歌う女性ボーカルの声が胸に届くなあと思っていた。歌詞まではあんまり気に留めていなかったけれど、よく読んでみると、選ばれた言葉だなと気づく。水野さんが書いた言葉を吉岡さんという女性ボーカルが歌うことで、世界観が変換され、その歌が遠くまで届くようになっている。自分の頭の中の風景を押し付けるのではなく、彼らの歌を聞いた人が自分の生活の中で、その意味を解釈して聞いてくれればいいという。100%分かり合えることなんてない、という彼の確信は、ネガティブにならずに、それぞれの人が自由に思いを入れられる「器」になることを目指すという、宗教者のごとき考えを実践することになる。そして、それは成功しているのだ。
かれらが発表した曲すべてを知っているわけではないが、シンプルな力強さが心に響く。それは路上ライブをしていた頃に、立ち止まってくれた一人ひとりの顔をみながら、次に演奏する曲を決めていたというエピソードにみられるように、聴衆の思いを増幅して届けているという立ち位置に常にいるからだろう。そして、言葉を磨くことに妥協しない。流行りの要素は入っていても、流行り言葉をそのまま使うことはない。相手が受け止めてくれないものだとわかった上で、相手が一番受け止めやすい場所へボールを投げつづけている。
バンドはまだまだ成長中だ。今後の活動の幅はもっと広がるかもしれない。とても気になる三人組だ。

いきものがたり

いきものがたり