小田嶋隆のエッセイだ。ここで言うポエムは、詩とはちがって、独りよがりの夢を滔々と語る詩の形式をなぞった文章のことだ。ある種の広告コピーや自治体などの宣言風文章はこの仲間だ。歌詞の中にも存在するし、路上で色紙に書いて売っている文章やネットの書き込みの中でポエムは生息している。文章表現としては稚拙だが、独りよがりのポエムにも賛同者がいるため、世の中には多くのポエムが氾濫している。相手に届かなくてもいいんだ、俺がいいと思っているのだから、という自己肯定感と、誰でもすぐに真似できることが、流行の原因なのだろう。今や歌手が歌うのは、じっくり聞いてもらうためでなく、自分もカラオケで歌いたくなるような歌だそうだ。カラオケ市場経済なのだ。誰かの主観を真似て、自分の主観としてなぞり、それをまた別の人が自分の主観として返歌をする。そこには文脈やロジックが入るすきは
ない。いろいろと考えるきっかけを得た。
- 作者: 小田嶋隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/08/27
- メディア: 文庫
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