Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

豆大福と珈琲

標題の作品は2014年に朝日新聞に連載されたものだ。その新聞は切り抜いて取ってあった。好きな作家の一人だが、どんなモチーフからでも小説を作り上げる力量に唸らされる。片岡さんと村上春樹の小説を電車や喫茶店で読んでいると自分でも文章を書きたくなる。俺にだってこのくらいは、という不遜な思いからではない。自分の中の何かが刺激されるのだろう。学生時代のことや実家で過ごした夏休みの記憶が、ありありと蘇ることがある。そしてそれを題材にした文章を書きたいという思いが生まれる。小説の内容を楽しむだけでなく、そうしたイメージとともに過ごす時間が、片岡さんの本を読むたびに手に入れられる。それが嬉しい。
標題の作品をいれて5編の小説が収められている。豆大福に珈琲に鯛焼きに喫茶店日本的なるものをめぐって、独立した女と男と少年が登場する。最後に収められた作品では、自分も小説の中の人物として登場しながら、それぞの作品を連作のようにまとめてしまう。嬉しい驚きで退屈する暇がない。かつて存在したLPレコードには、一枚のレコードに収められた曲を一貫するテーマがあった。そんな音楽アルバムを思い出させてくれた。

豆大福と珈琲

豆大福と珈琲