Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

映画 半落ち

この映画は以前、海外から戻るときの飛行機の中で見た。森山直太朗の歌が最後に流れるのだが、その歌に圧倒されてしまったことを覚えている。細かなことは忘れてしまっていたので、再度観てみた、
現役警察官の警部がアルツハイマーになった妻を殺害する。頼まれて殺したと自首してきており、尊属殺人というシンプルな事件に思えた。だが自首するまでに二日経っていた。いったい何があったのか。
事件をシンプルのものとして手早く片付けたい警察上層部によって、その二日間のことは問われないように立件が進む。自首した元警部も警察機構をよく知っているから、その線で話をまとめようと供述を固める。真実を突き止めたいと、別の警察官や検事が捜査をしようとするが、上層部に握りつぶされる。官僚組織は、いつもこうだ。真実を知りたい人などはほとんどいないのだ。でも、それは現実社会に近いのだろう。
真実と思われることは、法定でのやり取りによって明らかになる。新聞記者の取材によって明らかになったのだった。だが、被告人である元警部は突きつけられた真相を認めず、簡単に結審したかた法定側の方針にそって、あっさりと懲役刑を宣告される。彼が、嘘をついても守りたかったものとは。愛しているからこそ妻に手をかけたということをどう考えればいいのか。大きな問いかけが投げかけられたまま閉廷。刑務所へと護送される時、小さな救いが訪れる。そして主題歌が流れる。
以前観たときは、飛行機の座席についた小さなスクリーンだったのでストーリーを追うことで一杯だったが、今回見直して、細かな演技の凄さや最後のシーンの紅葉の美しさにははじめて気がついた。寺尾聰は上手いなあと思った。
犯人が誰かということだけに終わらない社会派ミステリーは、64も横山秀夫が書いた作品だった。他の作品がとても気になっている。

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)