Life and Pages

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映画 ゆれる

幼いころ仲が良かった兄弟の心の葛藤を描いた映画だ。その兄弟と仲の良かった女性が吊橋から転落する。彼女と一緒にいた兄は自分が殺したと自首する。だが、裁判になるとそれは気のせいで、手を差し伸ばしたが落ちてしまったと自白内容を否定する。兄を助けようと必死の弟は、面会時の兄の言葉に激怒して、真実を法定で証言する。兄が彼女を突き落とすのを見ていたと。そして兄は7年の実刑判決を受ける。そして、出所の日、兄弟の母親の遺品の8ミリ映画を見ていた弟は、あの事件の日、兄が彼女の手をしっかりとつかんでいたのに滑り落ちてしまったことを見ていたことを突然思いだす。刑務所に兄を迎えに行くが、兄は県外行きのバスに乗ろうとしていた。最後に見た兄の表情は…。兄弟二人の思いは吊橋のように揺れ続け、真実はあっちこっちに振り回される。
弟の気持ちの変化が、この映画の軸になっている。弟は最後に真実に気づき、贖罪のために兄を迎えに行く。兄は弟の証言が嘘であることはわかっていたが、死なせてしまった彼女のことを思い、自らの贖罪のために刑務所での日々を選んだのだ。兄は自分の心の中の吊橋を渡りきった。ゆれてゆられながらも。弟は、7年経って、大きな揺り戻しを食らった。兄弟の絆はとうに、橋の下に落下してしまっている。弟の贖罪はこれから始まるが、許しを請う相手は、もう橋を渡りきってしまった。弟はこれから大きく揺れる橋を渡って生きていくことになる。だが、永遠に渡りきれないだろう。
これも西川美和監督作品だ。日本人の家族の人間関係にひそむ亀裂や行き違いを捉えるのがとてもうまい。だが、取り残された主人公はどこにもたどり着けないままだ。少しは学び、少しは成長するのだが。だが、それは現実の世界にとても近い気がする。単純なハッピーエンドもないし、不幸のどん底に突き落とされたままということもないけれど、もうどうにもならない事実を胸に抱えながら、それでも生きていくしかない。

ゆれる [DVD]

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