Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

Xと云う患者

芥川龍之介を愛する、イギリス人作家が、芥川本人の身に起こったことと、作品の中の主人公との話をひとつの巻物のように繋げて書き上げた、不思議な話だ。芥川の作品が解体され、解題され、この小説の中で展開される。芥川龍之介本人の身に起こったことなの…

映画 茅ヶ崎物語 - My Little Hometown

茅ヶ崎はなぜ、音楽家や芸術家を多く輩出しているのか? そんな素朴な地元愛から生まれた疑問から、宮地さんというレコード会社社員であり、桑田佳祐の幼なじみが茅ヶ崎の歴史をざっと、まとめた映画だ。こう書くと適当な映画の感じがするが、実際、構成はか…

NHKスペシャル 彼女は安楽死を選んだ

一人の女性がスイスに渡り、安楽死という方法で最期を迎えた。おだやかに、そっと。 彼女は原因不明の全身の筋肉に力が入らなくなる難病になり、少しずつ自分の体が自分でコントロール出来なくなっていく。ある日、入院していた病院の医師に勧められ、同じ病…

井上陽水英訳詩集

井上陽水の歌は、声の良さと単語の連なりの耳障りの良さに翻弄されて、雰囲気を楽しむものだと長い間思ってきた。本人も、かなり適当です、などと言っていたものだから、その言葉を真に受けてしまっていた。うかつだった。 キャンベルさんが訳されたと聞いて…

ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。

NASAでは宇宙飛行士の家族をサポートする「家族支援プログラム」があり、家族を大きくふたつに分類していた。「直系家族」と「拡大家族」だ。直系家族はスペースシャトル打ち上げの際、特別室に案内される。打ち上げを間近に見られるというだけでなく、万が…

IQ

2005~6年の過去の出来事と2013年の現在の出来事が章が変わるごとに交互に進む。現在、探偵業を生業とする主人公のIQの生き方を運命づけたのが2005年に最愛の兄を事故で失ったことだった。過去のパートでは、現在にいたるIQの暮らしや交友関係が描かれる。 I…

生きているのはなぜだろう。

脳の研究者が、生きていることの意味を科学的に明らかにした言説に、あのILMで活躍する若きコンセプトアーティストが絵をつけた絵本。なーんて言ってみたが、まちがってはいないが、大切なものがするりと落ちてしまった。自分は何のために生きているのか、自…

映画 キングダム

途中で、うーんと思って一旦スクリーンから眼を外した。マンガを映画にするのは難しいのだなと改めて思う。 三月のライオンの映画は、よくできていた。マンガの世界観をしっかりと受け継いでいて、マンガの愛読者として満足できたし、それ以上に映画の中の登…

NHKテレビ 英雄たちの選択 土偶を愛した弥生人

日本史の教科書では、1万年続いた縄文時代は、大陸から稲作と鉄器がもたらされると弥生時代へと変わった、と教えられている。 しかし、元号を変えるように、ある日一斉に日本中が稲作をはじめるわけはないし、1万年続いた文化などが一気になくなるわけもない…

あなたを愛してから

なんとも不思議な話だった。早川ポケットミステリーの一冊なのだから、ミステリーなんだと思って読んでいたけれど、いろんな要素が組み合わさったストーリーだった。読後も、これはミステリーなのか? と思う。謎解き、探偵、殺人事件、秘密、それに父親探し…

ある男

夫が不慮の事故で亡くなり、妻はそれを会ったことのない、夫の兄に伝えた。弔問に来た兄は、死んだ男は弟ではないと言う。では、私の夫は誰なのか・・・。なんとも上手い設定で、ページをめくらせる。 真相を知った後、妻は、三年半の幸せな夫婦生活をどう考…

映画 バイス

これもアカデミー賞作品の一つで、ずっと観たいと思っていた。面白かったけど、映画を観ながらアメリカのことに詳しければ、もっと面白がれるのだろうと感じた。私は副大統領のことはあまり意識したことがなく、映画の中でも言っていたが、大統領が死んだ時…

翻訳─訳すことのストラテジー

翻訳論にはあまり関心がなかった。欧米語間の翻訳と、欧米語から日本語への翻訳を同義に論じられないだろうなと漠然と思っていたからだ。それでも、大学の外国語学部では、翻訳論は人気だと聞いたことがある。抽象的なところで、くくることができれば、何か…

米原万里の「愛の法則」

米原さんが亡くなられたのは2006年。もうそんなに経つのか。希有の通訳者であり、博識の文章家だった。この本は、米原さんの講演を採録したものだが、著書に描かれたことのエッセンスがつまっている。 国を持たない民族にとっては、言葉と文化が強くなり、ア…

旅猫リポート

ふだんは手にしない作家だが、読書会の課題図書なので読んでみた。なかなかのページターナーで、あっという間に読み終えた。とてもよかった。主人公はやさしい青年で、ある事情があって飼い猫を友人に引き取ってもらうため、車に猫を乗せて会いに行く。その…

幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと

数多くの死を見つめてきた若い外科医が、死と向き合うことについて真摯に、素直に書いた本。医者は人間の死を、生と死の境をたくさん見てきている。なのに、医者が死について語ることはあまりないように思う。縁起でもない、と言われて封印されてしまうのだ…

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

私にとってグレイトフル・デッドとえば、リーダーだったジュリー・ガルシアが真っ先に思い浮かぶ。片岡義男の本を読んで、彼が本を書いているのを知り、すぐに読んだ。哲学的な内容で、示唆に富んでいたが、大地からエネルギーをもらうという言葉は当時は上…

映画 女王陛下のお気に入り

18世紀はじめ、アン王女時代のイギリス。王女は側近サラの意のままに操られていた。ある日、没落した貴族の娘アビゲイルが、いとこのサラを訪ねて王宮へ。彼女は下働きの職にありつく。辛い仕事からなんとか脱しようと、目先の利くアビゲイルは、王女の足の…

浮雲

林芙美子の昭和24年の作品。戦後まもない頃だ。ゆき子と富田の、戦中から戦後にかけての愛憎の物語。今読むと不思議な感覚になる。時代を反映しているのだろう。敗戦後の貧困の中での自暴自棄な感じと、妄想のような希望が、安酒の酔いの中で同居している。…

アメリカ流れ者

映画を観た後に、制作裏話などを聞くと、そうだったのかと驚き、再認識することがよくある。そして、その手の話を聞くなら、町山さんがいちばんだ。この本では、21本の映画が取り上げられていて、またしても、なるほどと感心した。 マイケル・ムーア監督の世…

映画 グリーンブック

アカデミー賞作品賞作品を公開初日に観てきた。ストーリーはシンプルで、登場人物の対比構造も明確、訴えたいこともはっきりしている。でも、表現がとても現代的で、声高にならないように主張し、映像はあくまでもきれいな色彩で、よく考えられた作りの映画…

夜を乗り越える

又吉が読書家だとは聞いていたが、好きな本をしっかりと読んで、自分の学びにしているんだなと、この本を読んで思った。自分で小説を書こうとしたことから、文体、構成、方法を気にして小説を読むようになったという話はよくわかる。それから、とにかく毎日…

僕のなかの壊れていない部分

読書会のためにこの作者の作品をはじめて読んだ。読者は主人公の思考とともに、この本を読み進めていくことになるのだが、私は、この主人公に共感できぬまま、最後のページまでたどり着いてしまい、どこにも持って行き場のない思いがたまり、それをどうした…

発想力 「0から1」を生み出す15の方法

久しぶりに学長の本を読む。一度聞いたことがあることばかりのはずなのだが、リマインドされて気持ちが引き締められる。難しいことをわかりやすく説明することが本当に上手い。そして、引用している例が最新データと面白いエピソードで、なんとかパクれるチ…

TV総集編 半分、青い。

話題のドラマだったが観たことがなかった。で、年末の総集編を録画しておいて、ようやく観ることができた。というのも、奥歯を抜いてきたせいで、ずきずきと痛みがあり、集中力が続かないので、予定を放棄して、録画鑑賞にはしることにした。 案外面白かった…

TV NHKスペシャル「女7人おひとりさま みんなで一緒に暮らしたら」

年末に録画した番組を観た。71歳から83歳の女性たち7人が同じマンションにそれぞれ一人ずつ暮らし、時々集まって話したり、緊急時はSOSコールをしあう仲で、個を尊重しながらゆるい共生を続けて10年経ったという。結婚したことがある人もそうでない人もいる…

語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ

語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ どんなビジネスもこの考え方ならうまくいく (講談社+α新書) 作者: 水野麻子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る この人が書いていることは明解だ。「翻訳とは…

映画 エリック・クラプトン─12小節の人生─

クラプトンの半生を写真やDVDやコンサート映像やTV番組など少ない素材をなんとか繋げて、激動の人生を綴った映画だ。日本にはあまり報じられていない、家にこもってドラッグ浸けの生活をしていた4年の日々や、その後の泥酔しながらコンサートをしては失言を…

対談 小説を書くということ。

webの記事なのだけれど、しかも昨年読んでいる記事なのだけれど、このタイミングでこの記事を読んだみとについて、記録をしておこうと思った。 「例えば輪廻転生のお話でも、輪廻転生を徹底的にリアリズムで書いていったら、ないことになります。だけど「あ…

メモの魔力

話題の本を読んでみた。著者はとにかくファクトをメモとして記録し、それを抽象化(普遍化)して、他の分野に応用できないか、と考える。メモをとって終わりではなく、アイデアのきっかけにしていくまでの一連の思考をしようという提案だ。 メモを取る人は少な…