Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

ある男

夫が不慮の事故で亡くなり、妻はそれを会ったことのない、夫の兄に伝えた。弔問に来た兄は、死んだ男は弟ではないと言う。では、私の夫は誰なのか・・・。なんとも上手い設定で、ページをめくらせる。 真相を知った後、妻は、三年半の幸せな夫婦生活をどう考…

映画 バイス

これもアカデミー賞作品の一つで、ずっと観たいと思っていた。面白かったけど、映画を観ながらアメリカのことに詳しければ、もっと面白がれるのだろうと感じた。私は副大統領のことはあまり意識したことがなく、映画の中でも言っていたが、大統領が死んだ時…

翻訳─訳すことのストラテジー

翻訳論にはあまり関心がなかった。欧米語間の翻訳と、欧米語から日本語への翻訳を同義に論じられないだろうなと漠然と思っていたからだ。それでも、大学の外国語学部では、翻訳論は人気だと聞いたことがある。抽象的なところで、くくることができれば、何か…

米原万里の「愛の法則」

米原さんが亡くなられたのは2006年。もうそんなに経つのか。希有の通訳者であり、博識の文章家だった。この本は、米原さんの講演を採録したものだが、著書に描かれたことのエッセンスがつまっている。 国を持たない民族にとっては、言葉と文化が強くなり、ア…

旅猫リポート

ふだんは手にしない作家だが、読書会の課題図書なので読んでみた。なかなかのページターナーで、あっという間に読み終えた。とてもよかった。主人公はやさしい青年で、ある事情があって飼い猫を友人に引き取ってもらうため、車に猫を乗せて会いに行く。その…

幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと

数多くの死を見つめてきた若い外科医が、死と向き合うことについて真摯に、素直に書いた本。医者は人間の死を、生と死の境をたくさん見てきている。なのに、医者が死について語ることはあまりないように思う。縁起でもない、と言われて封印されてしまうのだ…

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

私にとってグレイトフル・デッドとえば、リーダーだったジュリー・ガルシアが真っ先に思い浮かぶ。片岡義男の本を読んで、彼が本を書いているのを知り、すぐに読んだ。哲学的な内容で、示唆に富んでいたが、大地からエネルギーをもらうという言葉は当時は上…

映画 女王陛下のお気に入り

18世紀はじめ、アン王女時代のイギリス。王女は側近サラの意のままに操られていた。ある日、没落した貴族の娘アビゲイルが、いとこのサラを訪ねて王宮へ。彼女は下働きの職にありつく。辛い仕事からなんとか脱しようと、目先の利くアビゲイルは、王女の足の…

浮雲

林芙美子の昭和24年の作品。戦後まもない頃だ。ゆき子と富田の、戦中から戦後にかけての愛憎の物語。今読むと不思議な感覚になる。時代を反映しているのだろう。敗戦後の貧困の中での自暴自棄な感じと、妄想のような希望が、安酒の酔いの中で同居している。…

アメリカ流れ者

映画を観た後に、制作裏話などを聞くと、そうだったのかと驚き、再認識することがよくある。そして、その手の話を聞くなら、町山さんがいちばんだ。この本では、21本の映画が取り上げられていて、またしても、なるほどと感心した。 マイケル・ムーア監督の世…

映画 グリーンブック

アカデミー賞作品賞作品を公開初日に観てきた。ストーリーはシンプルで、登場人物の対比構造も明確、訴えたいこともはっきりしている。でも、表現がとても現代的で、声高にならないように主張し、映像はあくまでもきれいな色彩で、よく考えられた作りの映画…

夜を乗り越える

又吉が読書家だとは聞いていたが、好きな本をしっかりと読んで、自分の学びにしているんだなと、この本を読んで思った。自分で小説を書こうとしたことから、文体、構成、方法を気にして小説を読むようになったという話はよくわかる。それから、とにかく毎日…

僕のなかの壊れていない部分

読書会のためにこの作者の作品をはじめて読んだ。読者は主人公の思考とともに、この本を読み進めていくことになるのだが、私は、この主人公に共感できぬまま、最後のページまでたどり着いてしまい、どこにも持って行き場のない思いがたまり、それをどうした…

発想力 「0から1」を生み出す15の方法

久しぶりに学長の本を読む。一度聞いたことがあることばかりのはずなのだが、リマインドされて気持ちが引き締められる。難しいことをわかりやすく説明することが本当に上手い。そして、引用している例が最新データと面白いエピソードで、なんとかパクれるチ…

TV総集編 半分、青い。

話題のドラマだったが観たことがなかった。で、年末の総集編を録画しておいて、ようやく観ることができた。というのも、奥歯を抜いてきたせいで、ずきずきと痛みがあり、集中力が続かないので、予定を放棄して、録画鑑賞にはしることにした。 案外面白かった…

TV NHKスペシャル「女7人おひとりさま みんなで一緒に暮らしたら」

年末に録画した番組を観た。71歳から83歳の女性たち7人が同じマンションにそれぞれ一人ずつ暮らし、時々集まって話したり、緊急時はSOSコールをしあう仲で、個を尊重しながらゆるい共生を続けて10年経ったという。結婚したことがある人もそうでない人もいる…

語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ

語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ どんなビジネスもこの考え方ならうまくいく (講談社+α新書) 作者: 水野麻子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る この人が書いていることは明解だ。「翻訳とは…

映画 エリック・クラプトン─12小節の人生─

クラプトンの半生を写真やDVDやコンサート映像やTV番組など少ない素材をなんとか繋げて、激動の人生を綴った映画だ。日本にはあまり報じられていない、家にこもってドラッグ浸けの生活をしていた4年の日々や、その後の泥酔しながらコンサートをしては失言を…

対談 小説を書くということ。

webの記事なのだけれど、しかも昨年読んでいる記事なのだけれど、このタイミングでこの記事を読んだみとについて、記録をしておこうと思った。 「例えば輪廻転生のお話でも、輪廻転生を徹底的にリアリズムで書いていったら、ないことになります。だけど「あ…

メモの魔力

話題の本を読んでみた。著者はとにかくファクトをメモとして記録し、それを抽象化(普遍化)して、他の分野に応用できないか、と考える。メモをとって終わりではなく、アイデアのきっかけにしていくまでの一連の思考をしようという提案だ。 メモを取る人は少な…

表現の技術

電通のCDの高崎さんの本だ。面識はないが、どんな仕事をしてきたかは知っている。題名の通り、CMなどの表現についての技術的な解説をしている本だが、CMを作ってきた方法で映画を構成する方法について書いているところはなかなか圧巻だ。実際、映画も撮って…

映画『アリー/スター誕生』

渋い歌声にいきなり映画に引き込まれる。この声、こんな感じの曲。老いたロックスターの雰囲気。これがなんと、アメリカン・スナイパーの俳優だとは。こんなに歌が上手いとは。ガガが登場する前に、すっかり映画に入り込んでしまった。 すっぴんのガガはシャ…

ほどけるとける

「戦友の恋」のB面という位置づけの小説。前回の主人公、佐紀にかわって美和が主人公になって、前回で語られた物語を別の視点から描いている。前作では語られなかった心情などがわかってくる。また、前作ですでに読者が知っていることを、今回の主人公は知ら…

3月のライオン14

待望の3月のライオンが本日発売。マンガは絵が苦手なものがあって、なんでも読むわけではないが、この作家の絵もストーリーも好きだ。主人公は17歳のプロ棋士で、三人姉妹の家族と仲良くなり、いろんな出来事を経て、家族のような関係が生まれた。そんな彼ら…

みっつめのボールのようなことば。

この本は、糸井さんのことばを拾って、一度出版された本の中から、いくつものことばを抜粋して作られた本だ。シティボーイズのコントに「びんぶたジャム」というものがあって、ジャムの瓶の裏についたジャムはなぜか余計に美味しい気がするので、その瓶の裏…

他人だったのに。

毎年一冊でる本で、これは12冊目。糸井さんがあちこちに書いた文章を、永田さんという人が集めて、並べて、並べ替えて、組んでみて、フォントなんかもあれこれやってみて、作った本。ことしも、いっぱいいい言葉に出会いました。年末のプレゼントですね、自…

戦友の恋

書評家の北上次郎氏に勧められて、読んでみた。女性ふたりの友情の話なのだが、冒頭から、一人の女性はすでにこの世にいないことがわかる。残された主人公が、思い出を語る「戦友の恋」という短編を含めて六編の連作だ。主人公はマンガの原作者であり、すで…

もつれ

ポーランドを舞台に検察官シャツキが活躍するシリーズの一冊。邦訳は三作目が先に出たが、シリーズとしてはこちらが一作目になる。私立探偵でも刑事でもなく、検察官が捜査に乗り出すという設定は、最近では定番の一つだ。 心理セラピー参加者が死体で発見さ…

10年後の仕事図鑑

AIが進化したおかげで、人間の仕事が奪われるという記事が昨年くらいからよく新聞や雑誌で見かけるようになった。この本でも、今後なくなる仕事について言及しているが、脅しではない。むしろ、びくびくしながら生きていく必要はないと言っている。お金より…

おいぼれハムレット

題名の通り、あのお話の頃を過ぎて、老いさらばえたハムレットの話、後日譚風なお話というから、こんなことをそもそも書ける人がいるのか、てなことを思いまするが、いややはり、橋本治の仕業でありました。と、いつのまにかこっちまで落語風になってしまう…