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在日日本人

著者の宮本さんはNYで精神分析医を開業していたが、なぜか厚生省の役人にスカウトされ、日本に戻ってきた。さまざまな不合理で理不尽な組織の風土に驚くが、自分がNYで診察した日本人ビジネスマンの症状と重ね合わせて考えてみると、どうやらそれは日本的なものだということに気がつく。有給休暇が残っていても、まとめてとるのは認められない。なぜなら前例がないから。自分の仕事が終わっても、すぐに帰ってはいけない。なぜなら、他の部署の人達が働いているから。組織のムダをみつけ、効率よくしごとをするために部の統廃合を提案したら、危険人物扱い。なぜなら、自分のポジションを守るために暇でも忙しく振る舞っているのが仕事だと考えているから。日本の企業で働いたことがある人なら、似たようなことを経験しているはずだ。一番ひどいと思ったのは、休暇届を提出して休みに入ったのに、戻ってきたら提出していないことになっていたという一件だ。たかだか休暇が長いというだけでここまでやるのだ。原発やら豊洲市場やら、都合の悪いことは平気で隠すのは当然のことだと思った。
NYで診た患者の事例は、大概が日本的な発想を前提で物事を考え、おかしいと思っても、英語が下手でうまくコミュニケーションできないために説得できず、部下の仕事も抱えこむ管理職の悩みだ。英語が下手なのはともかく、阿吽の呼吸のように日本的な察してくれるはず、という考えを前提にしていては、外国人とは仕事ができない。言われれば明確なことなのだが、日本国内で育ってしまうと、そういうことに疑問をもつこともなく大人になってしまっているということだろう。そして、日本の会社や組織は、そうしたことを前提に運営されている。効率よりも、30年、40年と一緒に過ごす同僚との和が何よりも優先されるということだ。
最初は驚き、憤り、あきれて読んでいたが、なるほどそうだなあと日本人としての自分の考え方やものの見方も「当然だ」と思ってきたことがあるなあと自省した。そして、20年以上前の本だが、日本は基本的には何も変わっていないと感じた。

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