Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

2022-01-01から1年間の記事一覧

ライオンのおやつ

昨年、この小説を元にしたテレビドラマを観た。とても良かった。過剰にならず、淡々とでもひたむきに生き抜く様子が。 主人公は、末期がんに蝕まれ、離島のホスピスへ最後の時間を過ごしにやってくる。風光明媚なだけでなく、スタッフの温かさもあり雰囲気は…

緑の歌

はっぴいえんどと細野晴臣の音楽が好きで、村上春樹の小説が好きな、台湾のイラストレーターの女性が漫画の形式で書いたとても私的な小説。音楽を聴くことによって広がる想像力と、豊かな感受性で感じ取る現実がつながっていて、独自の世界観を描いている。…

長い別れ

チャンドラーのこの作品は、三人目の訳者を得た。読み始めてすぐに、これは好きな小説だとわかった。だからマーロウとの時間をできるだけ楽もうと、じっくりと時間をかけて読んだ。今は心地よい読後感に酔いしれている。 清水訳の長いお別れが垣間見せてくれ…

女のいない男たち

映画ドライブマイカーの原作となった短編集だ。映画を観たあとに読み直してみた。たしかに、あの映画はこの小説集の世界観をうまく表現していたなと思う。それでも、小説を読んでいるとき、わたしの頭の中にある主人公は西島秀明ではない。あたりまえだ。映…

映画 ドライブ・マイ・カー

まるで村上春樹の小説を読んでいるような映画だと感じた。淡々としたテンポ、感情過多にならない口調のせいだろうか。ストーリーは同名の小説とはいくつか設定などが変えられている。自動車も、車種は一緒だが色が違っていた。他の小説のストーリーも混じっ…

べてるの家の「非」援助論

「『弱さ』とは、いわば『希少金属』や『触媒』のように周囲を活性化する要素を持っているのではないか。人の持つ『弱さ』は、けっして劣った常態として、人の目をはばかったり、隠されるべきものではない。べてるでは、弱さとは、公開されて初めて威力を発…

映画 コーダ あいのうた

今年のアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞を獲った話題の映画で、とてよかった。聴覚障害者の役を本当に聴覚障害を持つ俳優が演じているのだが、その演技力は素晴らしい。リアリティということ以上に、私の胸に迫るものがあった。 タイトルの「コーダ…

エデュケーション 大学は私の人生を変えた

こんなことが本当にあるのだろうかと読み終わった後も信じられない思いだ。しかし、これは著者がたどってきた人生の真実の話だ。 タラは、アイダホ州でサバイバリスト(こういう言葉があるんだね)の両親のもとで生まれた。子どもたちは出生届けさえ出してもら…

風よ あらしよ

伊藤野枝の人生を描いた小説だ。大杉栄とともに憲兵隊に殺された彼女は、歴史的には恋多き女として知られている。瀬戸内寂聴もまた、自分の人生を重ねるように彼女の物語を書いている。野枝は大杉との間に4人の子どもを成すが、それに先立ち彼女と大杉は無政…

閑話休題 岸谷香感謝祭コンサート

コロナ禍ではあるが、前にチケットを買っていたので細心の注意を払ってコンサートに行ってきた。マスクを二重にして、声を出さないようにして。観客はプリプリ以来のファンとおぼしきおばさまたちが多く、おとなしいがなかなかに盛り上がる。ゲストはトライ…

ワシントンハイツの旋風

戦後、東京のど真ん中、代々木に広大なアメリカ空軍兵とその家族のための住宅地区が作られた。そこはワシントンハイツと呼ばれ、今の代々木公園からNHKのあたりまでの広大な区画だ。その歴史を知りたくて、この本を借りたのだがその目論みは外れた。戦後の時…

絶対安全剃刀

ラジオで「田辺のつる」の話が出て、気になってその短編が収めてある高野文子の作品集を買った。田辺つるさんは、少し物忘れがひどくなった82歳の女性なのだが、自分のことを子どもだと思っている。だから漫画の中のつるさんは5歳くらいの女の子だ。孫娘の人…

映画 浅草キッド

話題の映画を帰省時の新幹線の中で観た。タケシの映画だと思っていたら、師匠についての物語だった。その師匠を大泉洋が演じていて、なんだかとても良かった。実際には知らないが昔の浅草の感じがとてもよく描かれていたように思う。その頃の浅草に行ってみ…