Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

ライオンのおやつ

昨年、この小説を元にしたテレビドラマを観た。とても良かった。過剰にならず、淡々とでもひたむきに生き抜く様子が。

主人公は、末期がんに蝕まれ、離島のホスピスへ最後の時間を過ごしにやってくる。風光明媚なだけでなく、スタッフの温かさもあり雰囲気は暗くない。それでも、先立つ入居者を目の当たりにする。ときには絶望し、塞ぎ込み、逡巡する。でも、それは人間そのものだ。死期を知る人たちだけの特徴ではない。私たちは気づいていないか、気づかないふりをしているだけなのだ。

自分にとっての生と死を振り返り、前を向いて天命にまかせる。それはきっと昔の人間は誰もがふつうにやっていたことなのかもしれない。自分の人生を、自分のナラティブとして受け止め、前進する。きれい事なのだろうか。いや、こうした気持ちは誰もがわかるのではないか。

それにしても、この作家の文章は、すごい、優しい調子で力まずに書いていて、するすると読ませる。こうした作家の方が文豪なのではないかと思う。いい本だった。