Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

緑の歌

はっぴいえんど細野晴臣の音楽が好きで、村上春樹の小説が好きな、台湾のイラストレーターの女性が漫画の形式で書いたとても私的な小説。音楽を聴くことによって広がる想像力と、豊かな感受性で感じ取る現実がつながっていて、独自の世界観を描いている。主人公の緑は大学生。ミュージシャンの彼のことで頭がいっぱいになるが、素直に思いを打ち明けられない。自分は彼のために何もして上げられないと思って悲しくなっている。それから細野晴臣のことが本当に好きで、台湾でのコンサートに出かけて深く音楽の世界に入り込む。

最近、日本でもはっぴいえんどや細野さんのことが取り上げられることが多かったけれど、彼らの音楽は、あの頃、70年代かな、その時代の空気を伝えてくれるし、同時に流行廃りとは無縁の時空に存在しているようにも思える。音楽的にはとても豊かな時代だった。

優しい絵が物語のトーン&マナーに本当によくあっていて、懐かしいとかいう感情だけではなく、気持ちのすれ違いや言葉にならない思いなど、かすかな気配のようなものまでくみ取って、主人公の心の機微を伝えている。この作家の次回作が楽しみだ。