Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

2020-01-01から1年間の記事一覧

あなたの会社、その働き方は幸せですか?

上野千鶴子さんと出口治明さんの対談。京大の同期なのだというが、全然違う個性のようだが、リベラルで合理主義の教育者というのは大きな共通点だ。いくつも名言があったのだが、なかでも多様性とは個性を尊重することで、それは合理性を重んじることだ、と…

翻訳はいかにすべきか

すすめる人があって、この本を読む。柳瀬尚紀といえば、ユリシーズなどの翻訳を手がける翻訳の大家である。ここでは、持論を展開にするにあたって、世に出ている翻訳書の訳文を取り上げ、自分あればこう訳す、というか、このようにしか解釈できないはずだと…

神さまの貨物

むかしむかし森に暮らす夫婦がいた。夫は侵略者によって毎日土木工事をさせられていた。妻は食べ物になりそうなものを探して歩くがたいしたものは見つけられない。それでも毎日毎日森の中に出かけていった。貧しいけれど子供がほしいと毎日神さまに願ってい…

JR上野駅公園口

全米図書賞受賞ということで、ミーハーにも、初めてこの作家の本を読んでみることにした。平成天皇と同じ年に生まれた主人公は東京オリンピックの前年に鹿島から出稼ぎに東京にやってくる。結婚し、一男一女の子供にも恵まれたが、妻と一緒に暮らした日は指…

プロデュースの基本

いろんな業界にプロデューサーを名乗る人がいるが、音楽プロデューサーは音楽を愛している人、映画プロデューサーは映画を愛している人、というように、作品作りが本当に好きな人でないとプロデューサーにはなれないのだと思う。そして作家視点とファンの視…

鬼の子

一学期の終業式の日、中学三年の福田みのるくんは、上半身裸でリュックをしょった少年と出会う。野球部を辞めたばかりのみのるは自分のユニフォームを少年にあげる。少年はなぜか、家までついてきて、よく見ると頭に一本角が生えている。あれっと思いながら…

父を想う

「夢は追いかけた分、近づいてくる」そう言ったのは、ブラジルの国民的ピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンス氏だ。13歳でプロデビュー、何度かの災難に見舞われながらも、ビアニストとして活躍していたが、両手の指が思うように動かなくなり、2019…

燃えるスカートの少女

不思議な物語の短編集。残酷なおとぎ話のような、夢で見たストーリーのような、アフォリズムのような。ことの顛末とともに、それにともなう感情を描こうとしているようだ。 二人の娘を持つ父親はある日、お腹に大きな穴があく。サーカーボールが入るほどの。…

年月日

ネットで紹介されていた中国文学の一冊。とてもいい話だった。ノーベル文学賞の候補にもなっている著者だそうだが、初めて読んだ。 先じいは、中国の山中の寒村で目が見えなくなった犬と暮らしている。年々、日射しが強くなり、雨も降らなくなって、農民たち…

職業は忍者

東京の山奥に移り住んで、忍者を生業にしようとしている人の話。脱サラして、もともと興味のあった武道の集大成として忍者の道を選んだ、ユニークな経歴。小田原は風魔と呼ばれる忍者一族が北条五代に仕えたと言われているが、真相は不明。なにしろ忍者が、…

鴻上尚史のほがらか人生相談

NHKのテレビでブレイディみかこさんと鴻上さんの対談を観て、その中で話題になった本を読んでみた。新聞に人生相談が載っていてもまず読まないが、それでもたまに眺めることがある。が、ほとんど覚えていない。以前、幡野さんの人生相談の本にはびっくりした…

異人たちとの夏

30年以上前の小説だ。あの頃読んだはずで、今回は再読になる。あっちの世界とこっちの世界がリアリティを持ってつながる、不思議な世界が描かれる。読後にしばらく余韻に浸っていたくなる、心地よい時間だった。 主人公は40代のシナリオライター。別れた妻に…

ベルリンは晴れているか

昨年話題になった本で、すぐに図書館に予約を入れたのだが、ようやく順番が回ってきたようだ。ブームの渦中で読まないことはいいことかもしれない。 舞台は第二次世界大戦時のドイツ、ベルリン。ナチが台頭し始める時からヒットラーの自殺によってドイツが敗…

映画 天気の子

昨年話題になっていた映画をwowowで観る。評判通り、映像は素晴らしく、登場人物も愛せる人たちでかわいいし、歌もよかった。私はこうしたSFのようなファンタジーのようなストーリーは嫌いじゃない。 でも、主人公の少年が最後に言う言葉には共感できなかっ…

33の悩みと答えの深い森。

ほぼ日刊イトイ新聞に読者から寄せられた、働くことや人生についての33の質問・相談とそれに対する33人の答え。悩みというのはいろいろあって、かつての自分が通ってきた道だよなと思うものもあったし、そこで悩むのかーというものある。そして、それに対す…

忍者入門

英語との対訳本でとても読みやすい。山田先生の監修で、楽しんで書いてある。挿絵になっている漫画のタッチがどうにも苦手だが、これが流行の漫画なんだろう。でも勉強になった。 Ninja 英語訳つき忍者入門 ― 忍者入門試験公式テキスト 発売日: 2019/02/08 …

家族だから愛したんじゃなくて愛したのが家族だった

タイトルからもうすごいのだが、元気にさせてくれる文章を書く人だ。著者が中学生のときに父親が突然亡くなる。それも、彼女が「お父さんなんか死んじゃえ」と言った日の夜に倒れて、そのまま入院してまもなく亡くなられた。なんという体験だろう。親子げん…

パンデミックの文明論

新型コロナに対する考え方、向き合い方の差は、歴史や文化によって大きく影響を受けている。西欧人にとってマスクをすることはスペイン風邪の記憶を呼び起こし、病気に負けた気になるのではないかとか、そもそも日本人は普段からソーシャルディスタンスを取…

映画 ボルグ/マッケンロー

このふたりのテニスプレイヤーのことは知っている。テレビでゲームの様子を見たこともある。でも、当時わたしはテニスをやっていなかったし、ルディアが喧伝するくらいのことしか知らなかった。たぶん、世界の大半の人々がそうなんだと思う。で、この映画が…

たちどまって考える

地元の人たちとのテニスサークルに久しぶりに参加した。おじさんのひとりが「大坂さんもお騒がせだね」とまるで天気の話をするみたいに、誰からも聞かれていないのにそう言い、幸いにも他の誰もそれに反応しなかったのでその話はそれで立ち消えになった。わ…

かならず先に好きになるどうぶつ。

毎年一冊出る、糸井重里氏のさまざまな文章を集めた本。年に一度の果実の収穫のようで、とても楽しみにしている。この本もいろいろとふーむと思わせ、考えさせられてしまった。引用していくときりがないので、短めのをひとつだけ。 「外れたときにもがっかり…

日本語と英語

2012年に発売された本だ。そのときに読んだ。今回、ふち本棚の中にあるのを目にとめ、再読した。日本語と英語の比較から、両者の考え方の違い、つまり世界観の違いを浮き彫りにしている。そして、ある一説でページをめくる指が止まった。 「Youという呼びか…

嵐のピクニック

本谷有希子さんの本は初めて読んだ。演劇の人でもあると知って、なるほどと思ったところがあった。とても視覚的な表現をするところと、ある出来事が起こってからは加速するような展開で一気に過激に暴走するようにクライマックスに向かうところだ。 この本は…

映画 ブルージャスミン

2013年の映画。ウディ・アレンの作品でアカデミー主演女優賞も獲っている。登場人物は誰もが、ああ、こういう人いるいると思えるので、ぐっと引き込まれる。 ケイト・プランシェット演じる主人公ジャスミンは、夫と別れ、NYから妹ジンジャーの住むSFに引っ越…

ヘミングウェイで学ぶ英文法

話題の本なので読んでみた。この本のおかげで、ヘミングウェイの原文の面白さを知った。とはいえ、6つの短編を読んだだけだが、単語の選び方が適切なのだ。以前から、よけいな修飾語を減らしたシンプルな文体ということは聞いていたが、実際に読んでみるとな…

薬物依存症

先月、とんねるずのタカの番組で話す清原を観た。なんだかほっとした。それで、この本を読むことにした。 球界のスーパースターは孤独だったと思う。そして、野球を辞めてからは自分の中にぽっかりと空いた穴を何をやっても埋めることができず、クスリに手を…

値上げのためのマーケティング戦略

マーケティングの本なのだが、価格設定を中心に書かれているのが特徴的だ。日本の企業は価格決めが下手だという指摘にはいきなり納得する。牛丼やさんや居酒屋の低価格競争のおかげで、消費者としては大変助かっているのだが、提供する側は儲けが少なく、苦…

Boy From Woods

以前読んだハーラン・コーベン著の「Run Away」の続編。NYの辣腕弁護士へスター・クリムスタインが活躍するシリーズだ。 最初のシーンは1986年4月、ニュージャージー州の森の中から6~8歳の少年が発見された新聞記事から始まる。そして舞台は2020年の4月、34…

一人称単数

村上さんの新作短編集。いくつかは月刊誌の連載時に読んでいたが、こうしてまとまった本を読むのはまた楽しい。大学生の頃からそうなのだが、村上春樹の小説を読んでいると自分でも物語を書きたくなってくる。今回はどれも面白かったが「品川猿の告白」のよ…

映画 ハリーの災難

1955年の作品。舞台のような展開の映画だ。 森の中に男が倒れている。死んでいるようだ。とおりかかった少年が見つけ、駆けだしていく。次にライフルをもった男がやってきて、自分が撃ったのだと思い、隠そうとする。 そこに婦人がやってくる。死体を見ても…