Life and Pages

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ベルリンは晴れているか

昨年話題になった本で、すぐに図書館に予約を入れたのだが、ようやく順番が回ってきたようだ。ブームの渦中で読まないことはいいことかもしれない。

舞台は第二次世界大戦時のドイツ、ベルリン。ナチが台頭し始める時からヒットラーの自殺によってドイツが敗戦し、アメリカ、イギリス、ソ連による占領下の時代。一人のドイツ人男性の死を巡って物語が進む。アウグステは戦局が悪化する中ナチによって両親を奪われ、戦後はソ連兵によって凌辱を受ける。英語ができた彼女はアメリカ軍が設置した食堂で働いていたが、突然ソ連兵に拉致され、ある男の不審死の犯人ではないかという嫌疑がかけられる。その男は、アメリカ製の歯磨きで歯を磨き、混入していた青酸カリで死んでいた。それは彼女がアメリカ軍から支給されたものではないかと疑われたりだ。取り調べの際に、真犯人かもしれない人物が浮かび上がる。そいつを探し出せ、さもなければ逮捕すると言われ、彼女はおぼろげな手がかりを頼りにその男を捜しに占領下のベルリンを歩き回る・・・。

少し疑問に思う説明があるが、それでもページをめくらせる技量はたいしたものだ。戦争の悲惨さを前線の戦いではなく、市民同士の密告、対立政党支持者間の諍い、政党批判が簡単に生命を脅かすことになる危険など、読んでいて本当に怖い。批判をするメディアや人々を排除する露骨なやり方は、今を生きる私たちの身にも降りかかっていると改めて感じた。外国を舞台にこうした小説を日本人の作家が書くのは興味深い。ミステリーとか戦争物とかいう分類にはあてはめられない小説だ。

ベルリンは晴れているか

ベルリンは晴れているか