ネットで紹介されていた中国文学の一冊。とてもいい話だった。ノーベル文学賞の候補にもなっている著者だそうだが、初めて読んだ。
先じいは、中国の山中の寒村で目が見えなくなった犬と暮らしている。年々、日射しが強くなり、雨も降らなくなって、農民たちは村を捨てて出て行った。先じいは、一本のトウモロコシの苗を育てるために、肥料として尿をかけ、遠くまで水を汲みに行き、必死に干ばつからトウモロコシを守っている。あちこちからかき集めたトウモロコシの粒やワナで捕まえたネズミを犬と分け合い、命を繋いでいる。そしてとうとう食料も水も尽きる時が来た。先じいはトウモロコシの苗の横に人間が寝られるほどの穴を掘り、盲犬に言う。わしが先に死んだら、この穴に埋めて肥料にしろ。おまえが先立ったら、わしがおまえを埋める。それを聞いて犬は、盲いた目から涙を流す。先じいは言う。「わしが死んだら獣に生まれ変わっておまえになる。おまえが死んだら人に生まれ変わってわしの子どもになるんだ。これまでのように仲良くやっていこうじゃないか」
そして干ばつの時期が過ぎて村人たちが戻ってくるのだが。
不思議な話で杜子春を思い出した。中国大陸の大きなそして大自然の中で生まれた文学だ。