Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

薬物依存症

先月、とんねるずのタカの番組で話す清原を観た。なんだかほっとした。それで、この本を読むことにした。

球界のスーパースターは孤独だったと思う。そして、野球を辞めてからは自分の中にぽっかりと空いた穴を何をやっても埋めることができず、クスリに手を出した。そしてあと一回だけ、と思って使ってしまう。自分はまだ自分の意思でコントロールできると思っているのだが、本当はもう自分ではコントロールできなくなっている。自分の意志ではどうにもならない。病気なのだ。それも、化学薬物によって脳が変わってしまっている。死に至る前に逮捕されてよかったのかもしれない。

リハビリはつらい時間だった。最初は死にたくて仕方がなかった。いつまたクスリに手を出すかもしれないという恐怖と戦いながら、ひきこもるより他なかった。今年、執行猶予期間を無事に過ごして、晴れて普通の暮らしができるようになったのに、まだ、再びクスリに手を出してしまうのかも、という恐怖から逃れられない。それは、これからもずっと続くのだろう。

最愛の母は昨年亡くなられたが、子供たちとはまた会えるようになった。そして、こうした手記で自分を振り返ることができるようになった。その語り口がまっすぐで、不器用で、愛おしい。7月場所の大相撲で幕尻優勝を果たし、復活した照ノ富士のまっすぐさと重なる。「愚直に」そんな言葉を体現した二人。この言葉にこめられた意味の深さをかみしめて、自分も愚直に生きようと思った。

薬物依存症 (文春e-book)

薬物依存症 (文春e-book)