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神さまの貨物

むかしむかし森に暮らす夫婦がいた。夫は侵略者によって毎日土木工事をさせられていた。妻は食べ物になりそうなものを探して歩くがたいしたものは見つけられない。それでも毎日毎日森の中に出かけていった。貧しいけれど子供がほしいと毎日神さまに願っていた。

いつしか森の木が切られ線路が引かれ、貨物列車が通るようになった。妻は列車が通るたび、手を振り、神さまからの贈り物が届かないかと期待を募らせていた。ある日、貨車の小さな窓から何かが投げ出された。妻が近づくと、美しい布に生まれたばかりの赤ん坊が包まれていた。きっと神さまが願いを聞いてくれたに違いないと妻は思った。

その子を育てようと、妻は懸命に努力をする。夫はその子を殺しにやってきた兵隊に抵抗し命を落とす。妻は匿ってくれる人を探してその家に身を寄せるが、その人は解放軍の兵士に殺されてしまう。そして世界を巻き込んだ戦争が終わり、妻は成長した娘と一緒に過ごしていた。そこに現れたのは、あのとき貨車から赤ん坊を投げ出した・・・。

短い物語は淡々とした調子で、戦時下の景色を描いている。それでも、どれほど厳しくつらい日々をかいくぐってきたのかが、十分すぎるほど伝わってくる。これは事実なのかという問いは見当違いだ。愛を信じることの物語であり、本当にあったかもしれないお話だ。

神さまの貨物

神さまの貨物

  • 発売日: 2020/10/07
  • メディア: 単行本