Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

鴻上尚史のほがらか人生相談

NHKのテレビでブレイディみかこさんと鴻上さんの対談を観て、その中で話題になった本を読んでみた。新聞に人生相談が載っていてもまず読まないが、それでもたまに眺めることがある。が、ほとんど覚えていない。以前、幡野さんの人生相談の本にはびっくりしたが、それはわずかな文章量の質問から背景を読み解いて、直球で回答する、というやり方で他の誰リ人生相談とも違っていたからだ。今回は、幡野さんの回答とは違った意味で驚いた。鴻上さんは相手に確実に届くことを最大の目的として、具体的な対処方法までいくつか上げて回答している。例えば、鬱になって実家に帰ってきた妹を心配する兄からの質問は、そこが田舎であるゆえに世間体を気にして親が病院に行かせないがどうしたらいいだろうと本当に切実だ。これに対する回答は、手遅れになる前にとにかく病院に連れて行けと言う。昔はそうやって家の中に隠蔽されて何十年も過ごし、どうにもならなくなってしまった例を挙げ、とにかくすぐに、隣町でもいいから通えるところにある病院へ連れて行けと言う。結論だけ聞くとそりゃそうだと思うかもしれないが、筋道を立てて説得する文章の力に感心した。

大学生のときから劇団をしているから、劇団員や関係者から相談を持ちかけられることがとにかく多かったのだという。ある意味同じ船に乗る人たちだから、うち捨てておくこともできず、親身にそして具体的に解決策を考えてきたという。そういう積み重ねが、芝居にもきっと生きているだろうし、説得力のある文章を書けるようにしたのだろう。芝居の戯曲のように一気に読んでしまった。