Life and Pages

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映画 ナミヤ雑貨店の奇跡

ずっと前に録画してHDDに入っていたのをようやく観れた。お店の常連の子供たちから寄せられた相談に、何十年ものあいだ答えていたご主人のもとに人生の岐路に立った大人たちからも、相談が寄せられるようになる。こうした相談に対する回答は、どちらともとれる言葉を自分の思いにしたがって解釈することになるから、どちらかと言えば受け取り手の問題になる。それでも、自分の悩みを真摯に受け止めてくれた人がいるということは、それだけで、生きる力になることもある。

ご主人は、自分の死期を悟り、自分の三十三回忌に一日だけ窓口を開いて、自分の回答を受け取った人たちから、その後の人生について教えてもらいたいと、息子に託す。そして、その日がやって来て、2012年が1980年と時を超えてつながる。そして不思議なことが起こり、そこに巻き込まれた人たちに奇跡が起こる。時系列を解体することで、ファンタジーが立ち上がる。上手な物語だと思う。

ここ数年、日本の映画はファンタジー仕立てが多い。たいていは、死者と再び会うことになったりする「こうあってほしい」という、現代では失われてしまった人間の願いを描いている。それは、即効性のある癒やしとして、現代に求められているものなのかもしれない。

一方で、欧米の作家が描くファンタジーは、大きな視点から描かれた、ファンタジーでないと描ききれない物語のように思える。指輪物語の壮大なストーリーのように。それは癒やしではなく、新たな問いを視聴者や読者に投げかける。生きることについてだったり、世界の見方についてだったり。

どちらがいいとか、そういうことではなく、作家の視点や関心がどこに向かっているかの違いなのだろう。今回観た映画は、よくできていたけれど、そんなことを考えさせてくれた。