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本や映画、音楽、日々の雑感

映画 ロケットマン

ずっと愛が欲しかったんだな、と映画を観終わってまず感じた。愛って何かわからなかったから、探しもとめていたんだなって。ただ、ハグしてほしかっただけなのに。ただ自分のことを受け止めてもらいたかっただけなのに。エルトン・ジョンの歌は、学生時代、社会人になり始めた頃、ずっとBGMのように流れていた。素晴らしい歌を、しっとりとした歌も歌うのに、なぜか仮装好きなPOPスター。おかしな人だと感じながら、POPスターとはそういうものなのだと勝手に思っていた。

楽家に限らずアーチストは、何かが欠落しているから、その穴を埋めようと何かを創り出すという人がいるが、彼は自分を全面的に受け入れてくれる人、場所を追い求め、その精神的な活動の中で音楽を創り出したのだろうか。天賦の才能に超絶ピアノ技巧を加えて、独自の歌を作った。盟友の作詞家がいたことも大きい。その才能を周りは放っておかない。音楽の持つ力は凄いものだし、そして大金を生み出すから、いろんな人たちがよってくる。そのときに、自分を保っていられるかどうか。アーチストは孤独だ。ミュージシャンは特に、取り巻きが増えるから、群衆の中の孤独を味わうことになる。一人でいる時間が減り、しらふでいられる時間が減り、睡眠時間が減る。なんでもとことん突き詰めてしまうのがアーチストだから、お酒が増え、薬にたより、sexに溺れる。自分を保つのがますます難しくなる。フレディと同じだ。

母に自分がホモセクシャルたど告げると、母は「もう誰にも愛されることはない人生をあなたは選んだのよ」と彼に告げる。エルトンは、自分の性向を否定されたということより、うすうす感じていた、母の愛の不在が確かなことにショックを受ける。

エルトンは酒と縁を切ることにする。そこで、もう一度自分を取り戻した。いや、ずっと手に入れたかったものが何かを再認識し、もう一度、求めた。今の彼は幸せそうだ。生きていてくれて良かった。

それにしても、音楽とは不思議なものだ。人の心に届く。外国語の歌でも涙がこぼれる。映像が浮かぶ。過去のある日がリアルに浮き上がり、匂いもする。魔法のようだ。そして、ミュージシャンは魔法使いのようだ。だから、人間とは違う体験をしてしまうのだろう。

隣の席のおしゃべりなおばさん二人は、映画が始まるとじっと静かに見入っていた。そしてエンドロールが流れると、歌を一緒に口ずさんでいた。エルトンのファンはすごい。

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