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映画 ドライブ・マイ・カー

まるで村上春樹の小説を読んでいるような映画だと感じた。淡々としたテンポ、感情過多にならない口調のせいだろうか。ストーリーは同名の小説とはいくつか設定などが変えられている。自動車も、車種は一緒だが色が違っていた。他の小説のストーリーも混じっている。でも、登場人物のキャラはあまり変わっていない。途中のシーンで、俳優たちが脚本の読み合わせをする際に感情を込めずにただ読み進める。深くないようを理解するために。そして内容と流れをすっかり理解した上で、多国籍の俳優たちが自分の台詞を自分の言語で言って、芝居が進んでいく。若い日本人男性が日本語で台詞を口にすると、その相手役の韓国人女性が韓国語で台詞を言う、というふうに。そして、中には手話で話す俳優もいる。舞台の上部には字幕を表示するディスプレイがあって、日本語の字幕が表示されている。

その試みは面白いと思った。実際に、このような多言語で芝居をしている実例があるのだろうか? この映画では、チェーホフのヴァーニャ伯父さんという設定だった。世界的な小説ならば成立しやすいのかもしれない。

ヴァーニャ伯父さんのテキストの使い方が秀逸だった。この戯曲の台詞が映画全編を通して語られる。そしてその台詞とそれぞれのシーンが、心情が、どこかリンクする。面白い構成だ。小説の言葉の深さ、汎用性に心をひかれた。

限定された空間と時間、小さな集団、島、繰り返し、そしてSEX。こうした要素が村上春樹の小説のような映画を作り出したのだと思う。

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