Life and Pages

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恋しくて

村上春樹の翻訳の新刊だ。ラブストーリーを集めたものだが、村上春樹が言うように、たしかにいろんな愛の形があるものだ。今回は、翻訳家としての村上春樹の文章を探ってみようと思って読んだ。翻訳調、という言い方があるが、これは翻訳調だ。そもそも、村上本人の小説も翻訳調的なものが色濃くあるし、それを狙っているとも言える。なので、翻訳調であることは少しもマイナスにならない。なにしろ、もっと凝った翻訳文を書く翻訳者は多そうだ。そう、そこなのである。柴田元幸もそうだけれど、どちらかと言えばぶっきらぼうな感じさえするのに、文章が気になるどころか、ストーリーの世界に誘い込まれていく。何を伝えるか、ということが明確になっているからなのではないかと思う。翻訳上手の秘密の解明にはまだ時間がかかりそうだ。

恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES

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