Life and Pages

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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

初版が50万部で、翌日にさらに10万部増刷というすごい人気だ。相変わらずの村上春樹の物語を進めるリズムを体感しながら、これは変わらないなあと思った。大学の頃から、彼の作品をほとんど発表と同時に読んできた。それは幸せなことだと思う。世界観はペシミスティックが基本になっているけれど、それでも、やっていかなくてはならない、という認識にとても共感する。完璧な世界を求め、いや、短い期間であっても、完璧といえる時間を経て、失われてしまった時間を生きることの意味を見いだしていく。なにしろ、そうしなければ、先に進めないくらい、きりきりと考え詰めたから。完璧な人生などはないけれど、完璧な一瞬を経験したことのある人は多いんじゃないかな。不必要に、完璧ではない今の人生を嘆くことはないけれど、完璧だった時間が与えてくれたものは、今に生きているのだ。巨人軍の投手だった江川が、いつも、最初のイニングでは完全試合を目指していたといった。フォアボールを出せば、次はノーヒットノーランを目指した。一本ヒットを打たれたら、完封をめざした。完璧さは低くなっていくのかもしれないが、つねに、その時のベストな結果を出そうとしていた。単純だろうか。子供っぽいだろうか。こうした想いを持って生きていく大人がもっといてもいいのではないか。
今回物語に書かれている後の話は、どのようになるのだろうか。今も、村上春樹の世界観にとらわれているままだ。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年