Life and Pages

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この夢の出来ばえ

片岡義男の新刊が出ていないかとAmazonをチェックしていたら、昨年発売されたこの本を見つけた。昨年のはじめはいろいろと忙しかったから見落としていたのだろう。東京の風景を切り取った写真集なのだが、あとがきの代わりの短い対談があって、その中で自分の小説の登場物についてこう話している。
「もちろん、現実は受け止めているんだけれども、『受け止めた上で、どうするか』ということだから。受け止めた上で流される、という生き方もあるし、受け止めた上で、対抗するという生き方もあるわけです。対抗しているんですよ、きっとね。対抗しないと、面白くないじゃないですか。物語にならないですよ。その人物が、どういう考え方にもとづいて、どういう行動で、どんなふうに対抗して、そこにどんな物語が生まれるのか、ということでしょう? 小説は。対抗しないと、いわゆる『等身大の小説』が出来るんですよね。『現実そのもの』みたいな。『ああ、わかるわかる』というような」
そして、対談相手は、日本でのあらゆる表現が、現実感や生活実感の中に埋没する競争をしているようだ、と言っている。
片岡義男の書くものをずっと好きでいるのは、登場人物の意思のあり方が好きなのだと再認識した。現実を受け止めた上で、さて、私はどうするのか。流されないように歩き始めたことは間違いない。

この夢の出来ばえ

この夢の出来ばえ