Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

音楽は自由にする

坂本龍一という人は、学究肌で物静かな人なのだと勝手に思っていた。クラシック音楽が主戦場なのかと思っていた。YMOの三人はずっとわかり合っているのだと思っていた。ラストエンペラーの映画音楽は、緻密に計算されて映像に合わせられていたのだと思っていた。ところが、どちらかというと、その反対だった。

1952年生まれの『教授』は、安保、ジャズ喫茶、アングラ演劇、現代思想ポップアートの真っ只中をくぐり抜けた人だった。前ページにわたって脚注があるのだが、彼の交友関係に出てくる人たちについての注を読んで、多くの事を発見した。私がまったく違う文脈で知っている思想家とデザイナーとミュージシャンが親子だったり、女性ミュージシャンの旦那さんが教授のマネージャーだったりしていて、びっくり。日本の文化的な奔流のど真ん中を泳いでいる人がYMOをやり、映画音楽をやっているのだ。本を読むことなどのお勉強ではなく、生身の人間からその時代を身にまとって今に至っているのだ。音楽はいろんなカルチャーを受け入れるものなのだなあ。