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グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

私にとってグレイトフル・デッドとえば、リーダーだったジュリー・ガルシアが真っ先に思い浮かぶ。片岡義男の本を読んで、彼が本を書いているのを知り、すぐに読んだ。哲学的な内容で、示唆に富んでいたが、大地からエネルギーをもらうという言葉は当時は上手く理解出来なかった。今なら、もう少し理解できるように思う。

この本は、タイトルの通りのとてもいい本だ。「グレイトフル・デッド」と「マーケティング」という言葉は縁遠いように聞こえるから、何か違う事を示唆する内容なのかと思うが、それが違っていた。ファンに対する彼らの態度や施策は、いわゆる一般のマーケティングとは違っている。たとえば、彼らは活動の初期から、ファンたちがコンサート会場で録音をしているのを知り、営利目的でない限りは全面的に録音することを認め、それどころか、録音機材を置く場所まで設けた。その結果、ファンたちは自分が録音したテープを友人に聞かせ、また互いに自分が録音したテープを交換しあうことで、ファンを増やし、絆を深め合っている。コンサート会場では録音禁止ということは、ミュージシャンにとっては当たり前のことになっているが、グレイトフル・デッドはそうしなかった。ファンを信じ、ファンに喜んでもらうことをするという態度を常にとり続けてきた。その結果、彼らのレコードやCDは売れなくなったのだろうか? いや、公式な音源も売れたのだ。ファンが録音したものは、口コミや宣伝のような役割を果たし、バンドの音楽が好きになったものは、高音質な公式音源も聞きたくなったからだ。これは、自分でもよく分かる。一時、F1レースを観るために世界各国を回っていたが、自分でも写真を撮ったが、プロのカメラマンが撮った写真が載る雑誌や書籍はしっかり買った。同じ写真でも、その役割が違うことは分かっていた。

それでも、ほとんどのミュージシャンはあいかわらず、録音禁止という方針を変えるつもりはない。また、コンサートチケットも、最前席はインターネットやチケットガイドでは買えない。良い席が欲しければ、郵便為替で、決められた住所に代金を郵送すれば、常連客でなくても、いい席が取れる。ファンを信じ、一緒に楽しもうという方針が一貫しているのだ。

マーケティングは、より最新の動向を知っている者が得をするような印象があるが、そうではない。自分たちが提供するものの価値を知り、どんなことをすればお客さんが喜ぶかを学んで、自らの道を突き進むことが重要なのだとこの本は教えてくれる。

 

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ