Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

ねみみにみみず

著者は2014年に亡くなられている翻訳家で、この本は帰らぬ人となったあとにご本人のエッセイや後書きをまとめたものだ。当時、その訃報は翻訳界を駆け巡った。私の師匠もその人の翻訳のうまさを褒めていた。凄い人だったと誰もが口にするものだから、この本はちょっと時間をおいてから読もうと思っていたら、こんなに時間が経ってしまった。

軽妙洒脱というのは、たしかにこういう文章のことなのだろう。だじゃれかよ、と思いながら、英語の原文をもとにここまで日本語で遊べるのものなのかと、その翻訳のクリエイティビティには感心するほかない。かといって、こうした質の高い翻訳が世に広まることでだめな翻訳が廃れるかというと、そんなことはなく、主に実務翻訳と呼ばれる分野では、いまだに不思議な日本語が幅をきかせている。

楽しく読んで、とても元気の出る本だった。かつての広告コピー年間や、コピーライターの作品集を読んでいる時のような、楽しい時間を過ごす事ができた。