Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

11月に去りし者

おもしろい小説だった。舞台は1963年11月22日から始まる。そう、ケネディが暗殺されたことから物語は動き出す。マフィアの幹部ギドリーは、ケネディ暗殺のニュースを聞いて、ぴんと来るものがあった。その一週間前、ダラスの町で自動車を一台手配する仕事をしていたからだ。その車は暗殺事件に関与したに違いない。そして、その車を処分する依頼が来た。やはり。ボスは、すべての証拠とすべての関係者を消すつもりだ。俺も消される。そして、逃避行が始まる。

彼を追う殺し屋バローネのストーリーが重なり、アル中の夫を捨てて娘二人を連れて車で西へと向かう主婦シャーロットのストーリーが重なる。ハードボイルドタッチだが、登場人物それぞれの心情が吐露されている。疑心暗鬼、一喜一憂。信じたいけれど、絶対的な確信は得られない。嘘だとわかっていても、そこには一片の真実がある。誰もがみな人間くさく描かれている。

ケネディ暗殺にまつわる映画や映像はたくさん見ている。だから、当時のアメリカの町並みや男他のスーツ姿、女たちの服装、無骨な拳銃、マフィアたちが乗る車、みんな、脳内で映像化できる。だから、とても読みやすく、どんどん引き込まれる。ヒリヒリする日々の連続。追う者、追われる者。騙すはずが愛してしまった男、騙されてもいいと思っていても、自分の心は騙せなかった女。そしてギドリーが選択した結論。

エピローグは2003年の話になる。事件から40年後。ヒリヒリとした日常が連続した40年前のストーリーとはがらりと変わって、小さな幸せが描かれる。幸せは過去形になってからでないと語れない、見つけられないものなのだとしみじみ思う。

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11月に去りし者