Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

クララとお日さま

クララは人工親友という存在だ。ジョジーに選ばれて、彼女と一緒に暮らすようになる。AIを備えた彼女は自分でどんどん学習し、自分なりの考えや信念を持つ。20世紀の文学で描かれた信念を持って行動した黒人たちや、異端と言われながら信仰を捨てなかった宗教者のように。

カズオ・イシグロの文学の舞台は、どこかの国の未来の話のようでいて、今われわれが生きている時代と地続きだ。クララの気持ちによりそい、彼女が信じて守ろうとしたものを共感することができる。他の子供たちは純粋で、のびのびと描かれる。大人たちは愚かだが、すべては子供のためを思って生きている。

自身の信じるところを貫いたクララの一生は幸せだったのだろうか。いや、幸せとは何なのだろうか。登場人物のそれぞれが思い描いたあるべき姿の、どれが正解だったのだろうか。そう思うと信念を貫いたクララの生き方から、私たちは学ぶことがたくさんある。しばらくは読後感の余韻に浸っていたい小説だ。

クララとお日さま

クララとお日さま