Life and Pages

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IQ

20056年の過去の出来事と2013年の現在の出来事が章が変わるごとに交互に進む。現在、探偵業を生業とする主人公のIQの生き方を運命づけたのが2005年に最愛の兄を事故で失ったことだった。過去のパートでは、現在にいたるIQの暮らしや交友関係が描かれる。

IQとは主人公のイニシャルなのだが、IQが高いために、そう呼ばれている。主人公はちょっと変わった探偵で、金のためというより、自分が肩入れしたい件を選んで働く。だから、慈善事業のようなものだ。しかし、どうしても金が必要になり、金回りのいい、ヤバい仕事に手を出すことに。頭脳を活かした推理力で事件の謎を解きほぐしていくが、マフィアや殺し屋と渡り合い、何度も死にかける。舞台は黒人のコミュニティ。ラップの訳詞が乗っているのが新鮮だ。訳者は大変だったのか、楽しみながら訳したのか。ステレオタイプではない、現代の黒人カルチャーが描かれていて興味深い。

最初は、なんだか読みづらかったのだが、後半にかけて事件が大きく動き出すとあっという間にページが進んだ。それでも、あまりの意外なハッピーなエンディングにちょっとしらけたのだが、最後の最後に、この本の続編を示唆する一行が出てくる。なかなか細かなところまで仕掛けを入れてきて、読者の感情を上げたり、下げたりするのが美味い作者だ。次回作も気になる。

 

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)