Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

窓の外を見てください

仕事や読書会に関連する読書ばかりで、自分のために買った本がなかなか読めない状態が続いている。そうした間隙を突いて、ようやく、この本が読めた。相変わらずの片岡義男の小説だ、という他はないのだが、大学生の頃から読み続けてきているので、自分の中の時間が、たっぷりと自由な時間のあったあの頃とシンクロして、ゆったりと流れるのがわかる。

この作家の登場人物たちを「現実感がない」と言って、小馬鹿にするのが、世間一般のスタイルだった。最近はネットの一部で再評価されているようだ。なんだか、自分が卒業した二流大学が、近頃はかなり一流大学風に扱われていると聞いたときのような、妙な感じだ。もともと、なかなかのものだったんだよ、ということにしておこう。

作家が主人公の連作は、その作家が体験する日常を、小説にしていくという、不思議な構造の小説になっている。片岡さんの日常がすでに小説のようだから、成立するのだろう。もしも私が、このスタイルを真似て小説を書いてみるなら、まず現実部分に相当するパートのフィクションを作り上げなければならないだろう。だから、そんな面倒なことはしないし、できそうにない。こうした世界を楽しみたいのなら、この作家の新作を読めばいいのだ。おかげさまで、いまも新作を出し続けてくれているのだから。

 

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