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映画 あん

以前、テレビで放映された直後にHDDに録って、見始めたのだが、テレビが壊れて買い換えたために続きを観れていなかった。最近、再放送があり、ようやく観ることができた。淡々と物語が進んでいく。永瀬はいい。悲しみとやりきれなさと反抗心と大きな優しさを体現した演技をしている。樹木希林は凄い。台詞を言う前にすでに、小さな仕種にも、そのキャラクターが反映されている。浅田美代子は、大嫌いだといいたくなるくらい、典型的な、近所にいそうな面倒な叔母さんそのものになっていた。

どら焼きを売る小さな店に、ある日、一人の老女が雇って欲しいと言ってくる。それほど繁盛してもいないし、狭い店で、一人で間に合っているので、雇えないと店長は告げる。しかし、その女性が置いていったあんこの美味さに驚き、あんこ作りを手伝ってもらう、いや教えてもらうことにする。それからは、あんこの美味しさが評判になり、開店を待つ行列ができるほどになる。しばらくして、その店のオーナー夫人がやって来て、アン作りの名人、徳江さんは元らい病患者だから、店を辞めさせろと言いに来る。店長は辞めさせなかったが、客足が遠のいたことで、徳江は店を去る。一生を監禁されて過ごしてきた人に対して、なんとも卑劣で理不尽な対応だろうと思うけれど、病気のことを噂程度にしか知らず、どんな扱われ方をしてきたかに思いをよせることもなく、よくわからないもの、自分たちとは違う人間は遠ざけておけばいいというやり口は、今の世の中そのものだ。徳江は、どんなものにも、例えば小豆にも言葉があって、それを聞くことは、誰でもできることであり、だからこそ、誰もが生きている価値があるという。散った桜の枝が風に揺れる様子を、手を振っているのね、と言う。生きることは、自分にとっての意味を探すことなのだと思う。誰かの決めた価値に従っているだけでは、生きることの本当の意味はわからないのかもしれない。

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