珈琲をテーマにした初めての、片岡義男のエッセイだ。彼の小説に珈琲は登場するが、それは珈琲をはさんで差し向かいになった人との会話のシーンとしてである。珈琲に関するエッセイは、これまでほとんどなかったというのは意外だ。若い頃は神保町の喫茶店で200字詰原稿用紙に鉛筆で原稿を書いていたそうだから、毎日何杯もの珈琲を飲んだに違いないし、飲まなくても注文したはずだ。今も打ち合わせは喫茶店が多いようだから、珈琲の出てくるシーンには事欠かない。もちろんここでいう珈琲とは、喫茶店のことでもあり、そこで流れている音楽、同席者のことでもある。そして珈琲の出てくる映画の1シーンであり、ペーパーバック小説の描写についてでもある。ここまで広がれば、片岡義男のいつもの世界だ。アメリカ文化を垣間見せてくれる彼の話を読みながら珈琲を飲む。
- 作者: 片岡義男
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/01/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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