Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

フィリップ・マーロウの教える生き方

フィリップ・マーロウの出てくる小説はみんな読んでいる。何度も読んでいる。違う訳者でも読んだし、あまりに好きになって、ついついペーパーバックでも読んだことがある。ハードボイルドと言われる小説の魅力は、主人公である私立探偵のタフさとその行動にある。そしてチャンドラーが作り上げた、この主人公はたくさんの比喩で自分を、世界を語る。辛辣でもあるし、卑下して聞こえる時もあるが、こうした寸言(ワンライナー)にはぐいっと心をつかまれた。そうした台詞を集めたのが、この本だ。
abc順に並べられ言葉を読み進めると、ああ、これだ! と、小説のストーリーを思い出す。やっぱりいいなあと。それでも、こんなこと言っていたっけ、というものもある。あんなに読んだのに、凄く好きなのになんでだろうと思う。きっと、ストーリー展開の中で読んでいるからだと思う。あまりに多くの比喩表現がでてくるから、記憶に長くとどまるものとそうではないものだって出てくる。それと、英語で読むのと日本語に訳された比喩を読むのとでは、気になる言葉が違うのだと思う。
そしてこれは何かに似ているなあと思い出したことがある。広告のキャッチフレーズを集めた本を読んだときの気分と似ている。どのキャッチフレーズも覚えていたが、最初に広告の中で目にしたときのまぶしさ、強さが抜け落ちていた。それは発表された当時の時代の気分やデザイン要素がなくっているからなのだと思う。それでも、もともとの広告を思い出すためのきっかけ集としては役にたつのだが。
この本もまた、チャンドラー愛を呼び起こさせてくれる装置としてはとてもうれしい。しっかりとした装丁もファンにとってはありがたい贈り物だった。

フィリップ・マーロウの教える生き方

フィリップ・マーロウの教える生き方