Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

ジャングル・ブック

前からこの本の存在は知っていたが、今回はじめて読んだ。とてもおもしろかった。狼に育てられた人間の男の子の話で、ジャングルに棲む動物たちとの交流が描かれている。動物と人間を対立軸で描くのではなく、動物たちを必要以上に擬人化するのでもなく、「掟」と「礼儀」を守る動物たちが共存している様子は、命あるものにとって普遍的な原理なのではないかと思った。肉食の動物たちは生きるために狩りをする。その当然の行為も、ジャングルの掟にしたがっていることとして描かれていて無理がない。人間の賢いところも愚かなところもすんなり納得させられた。インドのジャングルの中に、野生動物たちの生態の本質を読み取り、言葉で描写した作家の力量はすばらしい。
読後にふと、子供の頃に漫画で読んだ「ジャングル大帝」を思い出した。この作品とは違って、ライオンの子供が主人公の話だが、幼いうちに動物たちへの関心と愛情を育んでくれた、その影響力はとても大きかった。ジャングル・ブックは、子供向けの本ではないが、子供のうちにぜひ読んで、心にとどめておくべき本だと思う。ジャングル大帝を読んだ子どもたちは、動物園に行きたくなると思う。ジャングル・ブックを読んだ子どもたちは、いつかジャングルへ行きたいと願うのではないだろうか。

ジャングル・ブック (新潮文庫)

ジャングル・ブック (新潮文庫)