Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

夜を乗り越える

又吉が読書家だとは聞いていたが、好きな本をしっかりと読んで、自分の学びにしているんだなと、この本を読んで思った。自分で小説を書こうとしたことから、文体、構成、方法を気にして小説を読むようになったという話はよくわかる。それから、とにかく毎日書くということ。そして、毎回書き上げたあとは、内容はそのままで、言葉を置き換えて圧縮する作業を続けるという。こうしたことはさっそく真似したいことだ。

「誰にでも青春の中でダメな時期はある。でも人が死なない限り、それはバッドエンドじゃなくて途中なのだ」

「人は人、自分は自分という考え方はある意味逃げです。自分が思い描くように伝わらなかった場合、どのような考えを社会にぶつければ自分が思い描いたことが正しく伝わるのかをまた考えなくてはいけない」これは作家ならずとも、社会生活をする人間として心に命ずるべきことだと思う。

そして芸術を見る目として、「自分が作品を鑑賞してすごいかすごくないかと表現者が作品を信じているかどうかが僕の中での大きな基準です」というのもいいなと思う。

「でもその矛盾を含めて、いろいろな目標があって、ようやくその人がどういう人間かという全体像が浮かび上がってきます」

誠実さと自分の考えを伝わる言葉にできることが、又吉のいいところだ。

 

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)