Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

飛行士たちの話

切なくて不思議な、飛行士たちの物語が胸に小さな波を立てる。兵士の中でも、パイロットはほぼ全員が死ぬ運命にあったと言ってもいいのではないだろうか。生き残ったのは、ほんの一握りの幸運を得た者だけだろう。それ故に、死は他人ごとではない。スピーチの順番のように、いずれ、自分に回ってくるものだと感じていたのではないだろうか。
実際に飛行機乗りだった著者の、奇妙な世界観は、戦地での体験と密接につながっているように思える。気まぐれやでたらめで、刹那的な行為も、死の順番を待つ飛行士たちにとって、輝ける一瞬の命のきらめきだ。目に見える世界よりも大きな秩序の中で、飛行士同士は不思議な感覚を共有する。少年兵の母は、操縦する息子と共に心を一つにして運命さえも共有する。
死後の世界と言われる場所に似ているのかもしれない。自らの手で空を飛び、命のやり取りをした飛行士たちには、私たちが知らない宇宙を垣間見るのかもしれない。

飛行士たちの話

飛行士たちの話