Life and Pages

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映画 日本沈没

1973年に公開された、小松左京原作の映画。見た記憶があったのだが、うろ覚えだったのだが、今回はしっかりと観た。というか、日本が沈んでいく様子が眼に焼き付いた。公開当時は、アイデアの卓越さと特撮映像の素晴らしさで観客に初めて体験する恐怖を与えたことだろう。しかし、今の私にはリアル過ぎる映像だった。私だけでなく、阪神淡路大震災東日本大震災を経た日本人にとっては、あのときのニュース映像そのままで、あの当時の感情を呼び起こされる。1973年に、よくあれだけの映像を作り上げたものだと驚いた。SF作家の想像力はおそろしい。

しかし、この映画は可能性としての天変地異の恐ろしさを描くことだけではなく、国土をなくした国民が世界各地を放浪しはじめる、そのDay1を描いている。歴史やキリスト教の物語の中で、国土を持たない人々が彷徨う話を知ってるし、内戦で自分の国を追われた難民のことは今でもニュースになっている。その人々と同じ運命をたどる可能性が、日本人である私にもあるのだと想像したとき、心の中に嵐が巻き起こる。最初は絶望だと思う。それから、必死で今日を一日生き抜くことだけを考える。明日に希望はあるのだろうか。差別的な扱いを受けることもあるだろう。守るべき家族がいれば、その苦難はさらに大きくなる。

コロナ禍のこのタイミングで、この映画を観たことの意味は大きい。普通に生活できることの何というありがたさ!