Life and Pages

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戦友の恋

書評家の北上次郎氏に勧められて、読んでみた。女性ふたりの友情の話なのだが、冒頭から、一人の女性はすでにこの世にいないことがわかる。残された主人公が、思い出を語る「戦友の恋」という短編を含めて六編の連作だ。主人公はマンガの原作者であり、すでに失われた友人はマンガの編集者。ともに戦い、作り上げてきたものが主人公の回想から浮かび上がってくるのだが、たしかに二人の関係は戦友といっていいものだ。

登場人物は誰もが個性的で、造形がしっかりとしていて、それでいて書きすぎていないし、うわついていない。上手な作家だ。北上氏の解説によれば、これはヒロイン友情小説というジャンルの作品であり、佳作が多いという。そして、この連作に共通して流れているのは、大切なものを失った痛みと悲しみと切なさ。そして大切な人がもういない世界で生き続けようとする強い意思と、こんちくしょうという不条理な思いを抱えながら、前に進もうとする力。その姿勢に勇気づけられる。

「消えてしまったと思った人がまだそこにいるのなら、まだそこにいるうちに会いたい」「喪うことに慣れてしまったからといって、喪う前に放棄してしまっていいわけではない」この行を読んだとき、切なさがこみ上げてきた。たくさん喪ってしまったからこそ、今の一日の重さに気づく。さよならだけが人生だと言った人がいたが、それは悲観だけでなく、そんな現実と向き合うために自分に言い聞かせる言葉なのではないか。そんな気がした。