Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

夜を乗り越える

又吉が読書家だとは聞いていたが、好きな本をしっかりと読んで、自分の学びにしているんだなと、この本を読んで思った。自分で小説を書こうとしたことから、文体、構成、方法を気にして小説を読むようになったという話はよくわかる。それから、とにかく毎日書くということ。そして、毎回書き上げたあとは、内容はそのままで、言葉を置き換えて圧縮する作業を続けるという。こうしたことはさっそく真似したいことだ。

「誰にでも青春の中でダメな時期はある。でも人が死なない限り、それはバッドエンドじゃなくて途中なのだ」

「人は人、自分は自分という考え方はある意味逃げです。自分が思い描くように伝わらなかった場合、どのような考えを社会にぶつければ自分が思い描いたことが正しく伝わるのかをまた考えなくてはいけない」これは作家ならずとも、社会生活をする人間として心に命ずるべきことだと思う。

そして芸術を見る目として、「自分が作品を鑑賞してすごいかすごくないかと表現者が作品を信じているかどうかが僕の中での大きな基準です」というのもいいなと思う。

「でもその矛盾を含めて、いろいろな目標があって、ようやくその人がどういう人間かという全体像が浮かび上がってきます」

誠実さと自分の考えを伝わる言葉にできることが、又吉のいいところだ。

 

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

 

 

僕のなかの壊れていない部分

読書会のためにこの作者の作品をはじめて読んだ。読者は主人公の思考とともに、この本を読み進めていくことになるのだが、私は、この主人公に共感できぬまま、最後のページまでたどり着いてしまい、どこにも持って行き場のない思いがたまり、それをどうしたものかと考えあぐねている。

主人公は29歳の大手出版社に勤める編集者で、二歳のときに母に捨てられたという幼い頃の記憶がトラウマとなって、生きることに意味を見いだせないでいる。彼は同じような思いをもつ若者に自分のアパートの部屋を開放する一方で、3人の女性と同時につきあっている。一人からはお金をもらって性の相手となり、一人は小学生の息子を持つシングルマザー、そして3歳年下のスタイリストの彼女。主人公は相手の気持ちを考えたりはせず、自分の考えだけに従おうとしているので、結婚などは考えてもいないし、相手の思うように振る舞うのもいやだ。物語の途中で、一度は自分を捨てた母親が病死し、その葬儀から一週間も経たないうちに、年下の彼女の実家へ泊まりに行き、相手の両親の考えや言葉に反発して、夜のうちにその家を飛び出す。

誰もがいびつな世界観を通して、この世を眺めているのは事実であって、それを否定する気はない。しかし、この主人公は、自分の言葉に責任を持つといいながら、その言葉が相手に及ぼす影響については、まったく考慮していないし、自殺や死については分析的に考えようとしているわりには、「平凡な幸福は欲しくない」などと、とても曖昧な言葉遣いで物事を定義しようとする。記憶力がよく、東大出の秀才の編集者という設定なのだが、独りよがりの青臭い書生のように感じた。

 

僕のなかの壊れていない部分 (光文社文庫)

僕のなかの壊れていない部分 (光文社文庫)

 

 

発想力 「0から1」を生み出す15の方法

久しぶりに学長の本を読む。一度聞いたことがあることばかりのはずなのだが、リマインドされて気持ちが引き締められる。難しいことをわかりやすく説明することが本当に上手い。そして、引用している例が最新データと面白いエピソードで、なんとかパクれるチャンスはないかと考えてしまう。たまたま今日はご本人に会う機会が会って、学ぶことの重要性を再認識した。がんばろう。

・戦略的自由度

アービトラージ

・ニュー・コンビネーション

・固定費に対する貢献

・デジタル大陸時代の発想

・早送りの発想

・空いているものを有効利用する発想

・中間地点の発想

・RTOCS/他人の立場に立つ発想

・すべてが意味することは何?

・構想

・感情移入

・どんぶりとセグメンテーション

・時間軸をずらす

・横展開

 

 

TV総集編 半分、青い。

話題のドラマだったが観たことがなかった。で、年末の総集編を録画しておいて、ようやく観ることができた。というのも、奥歯を抜いてきたせいで、ずきずきと痛みがあり、集中力が続かないので、予定を放棄して、録画鑑賞にはしることにした。

案外面白かった。朝の連続テレビドラマであるから、きっとハッピーエンドだと思っていて、まあ、その通りだったのだが、設定、キャラクター、エピソードが少女マンガのようにわかりやすくて派手で、今時のドラマはわかりやすさがキーワードなのだと再認識した。そして、豪華俳優陣を揃えたこと。大河ドラマもそうだけれど、それほどドラマ好きでもない私でも知っている顔ぶれが勢揃いしていて、力の入れ方がよくわかる。これが二つ目のヒットのためのキーワードだ。

それでも、ドラマを観ながら自分のことを重ね合わせる場面もあり、こんなやつはいねえよと思いながらもこれはこうあって欲しいという作者の願いが込められているのだなととか、いろいろ考えながら観ていた。現実的ではない妄想要素を入れることが、3番目のキーワードだ。緻密さはないが、上手にいろいろな要素を盛り込んだドラマで、評判になった理由もわかった。

www.nhk.or.jp

TV NHKスペシャル「女7人おひとりさま みんなで一緒に暮らしたら」

年末に録画した番組を観た。71歳から83歳の女性たち7人が同じマンションにそれぞれ一人ずつ暮らし、時々集まって話したり、緊急時はSOSコールをしあう仲で、個を尊重しながらゆるい共生を続けて10年経ったという。結婚したことがある人もそうでない人もいるが、みんなアナウンサー、コピーライター、カウンセラー、大手企業広報など、ずっと仕事をしてきたということが共通点だ。10年経って、お一人は病気になり、今はリハビリ施設で暮らす。一つの理想の暮らしに思えたが、コミュニティのメンバーが年齢を重ねるにつれて体力気力に衰えが見えはじめ、変化の兆しが現れてきた。

実はこうしたコミュニティのアイディアを初めて聞いたのは30年以上前、大学に通っていた頃だ。日本文学の教授が自立した女性同士の共同生活を始めようと思っていると言っていたのだ。それ以来、そのアイディアのことはずっと頭の片隅にあった。

このコミュニティがうまくいってくれることを願いながら、いつかこの続編を番組にしてほしい。

語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ

 

 

 

この人が書いていることは明解だ。「翻訳とは『ある言語で表現された文章を他の言語で表現する』行為の総称であって、それ以上でもそれ以下でもない。」としていて、そのためにどうするかということを柔軟に考えて実行する。英語力とは何かについてもあいまいなままにせず、明解に答えてくれる。問題解決型思考の実践者である。

映画 エリック・クラプトン─12小節の人生─

クラプトンの半生を写真やDVDやコンサート映像やTV番組など少ない素材をなんとか繋げて、激動の人生を綴った映画だ。日本にはあまり報じられていない、家にこもってドラッグ浸けの生活をしていた4年の日々や、その後の泥酔しながらコンサートをしては失言を繰り返す時代も描かれていた。そして、最愛の息子の死とそこからアンプラングドを経て立ち直るまでの日々もについても描かれていた。よく生き残ったなあと思う。

母親の愛を知らず、その愛を必死で求めたが、しだいに他人を信じられなくなり、ドラッグと酒に溺れていく。一番上手いミュージシャンを集めて結成した理想のバンド、クリームはアグレッシブだっただけで、デレクアンドドミノスの方が良かったと言う。ジョージの妻に横恋慕して、一緒になったパティとは、自分のものになったとたんに、二人の仲はうまくいかなくなる。理想を描いていた自分のイメージが現実をはるかに超越したものになっているのだろうか。

しかし音楽に対する愛情は本物だった。常に新しい音楽を求めて進化していくクラプトン。その音楽の才能に嫉妬した神様が、彼の運命にいたずらをしたのかもしれない。

ミック・ジャガージョージ・ハリスンジョン・レノンキース・リチャーズB.B.キングなど懐かしいスターの顔ぶれをみるだけでも楽しい映画だった。

ericclaptonmovie.jp