Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

火星の人

火星探査に行ったNASAの宇宙飛行士が、嵐に遭って退却する際、一人が負傷し、消息不明となったためやむなく彼を火星において帰還する。だが、取り残された彼は生きていた。そして科学者の知識と柔軟な発想で生き延び、救出の日を待つ。だが、それは、4年先のことだ…。というストーリーのSF。先に映画オデッセイを観たが面白かった。ジャーナル形式で語られる物語だったので、本で読めばさらに面白いに違いないと考えて読み始めた。映画では語りきれないエピソードが多く、本を読んだのは正解だった。しかし、文章だけではわかりにくい機器の説明や化学実験の様子などは、映画を観なかったら想像もつかなかったと思う。映画と本の両方をあわせて楽しむのが一番良かったのかもしれない。アカデミー賞では何も受賞できなかったが、火星でサバイバルする人間の演技や火星基地の様子が、大仰でなく、あまりにもナチュラルだったからかもしれない。
この本は、たった一人の住人がいなくなった実家に向かう時に買った。心静かに読むにはとてもいい本だった。

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

翻訳問答2

翻訳家の鴻巣友希子さんと5人の作家が、英語の小説の一節を日本語に互いに翻訳して、語り合うという企画。前作では鴻巣さんが片岡義男さんと対談していて、とても面白かった。今回は、翻訳も行う作家の方がお相手なのだが、当然のことながら、それぞれが自分の文体を持っていて、翻訳にも文体がしっかりと反映されている、ということが興味深かった。英語を読むというインプットの過程は英語力が同じなら、一緒で、日本語に翻訳するというアウトプットの過程に個性がでる、と考えていたが。それだけではないようだ。インプットとは、自分の頭の中で、どのようにビジュアライズするかであり、それはその作家の個性(文体)による世界観なのだから、すでに読み取る時点で個性が表れている。もちろん、誤訳などではなく、元の英語から物語を読み取る際に、どこまでディテールを読み取るかということだ。型が決まっている、ということでもある。翻訳家に対して歯もちろん、作家という才能にも改めて敬意を表したくなる一冊だった。

翻訳問答2 創作のヒミツ

翻訳問答2 創作のヒミツ