Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

むかしむかしあるところに、死体がありました。

 日本人なら誰もがよく知る昔話の登場人物や枠組みを使って、視点をずらし、妄想を膨らませ、突っ込みを入れて、ミステリー仕立てにした短編集。一寸法師、花咲かじいさん、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎のお話の中になぜか死体が発見される。そこからいつもの物語が脱線し始め、アガサ・クリスティ風謎解きミステリーになっていく。そして「なるほど、そう来たか」と思っている間にあっという間に完結する、うまい構成だ。嫌いじゃない。わたしはkindleで読んだが、表紙のイラストが見られるカミの本の方がこの世界観をより楽しめたに違いない。

2013年に、親を殺された、子どもの鬼の視点から「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」というキャッチフレーズをつけた新聞広告が大賞を取ったことを思い出した。視点を変えよう、という趣旨の広告だったと思うが、そうした発想の転換が共通の認識として広まった成果なのかなとも思えた。

むかしむかしあるところに、死体がありました。

むかしむかしあるところに、死体がありました。