Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

いつも来る女の人

最近の片岡義男は、小説を書くプロセスを小説にすることが多い。そうなると登場人物は小説を書く人、ということになる。すでに作家である人が、これを小説にしたらいいのではないかと思いつく様子を描く。あるいはライターと呼ばれる人たちが、なにかのきっかけで小説を書くことになる。編集者や翻訳家というバリエーションもある。

これはかなり不思議な小説だ。日常の描写に心の動きが加わっているが、特別な事件やラブシーンが書かれているわけでもない。登場人物の物語が動き出すきっかけにフォーカスして、その前後の出来事をカメラで捉えているように描写する。アイデアを手にした瞬間の心の動きを描いている。

この本では、これから小説を書き出そうとする登場人物が次々とでてくる。そして、彼らが書こうとする小説はどれも日常風景の中にある。まるで小説を書くことは難しくないと言っているようなのだが、はたして本当にそうか。それを知るためには、この本の登場人物のように実際に書こうとしてみるのがいいのではないだろうか。