Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

わたしの子

「わたしはどれくらいあなたからうばい、与えてきたのだろう?」

じぶんの子どもに想いがつたわらない。できるだけ期待にこたえてあげたいとおもうけど、わたしだってつらいときはあるし、なんでも許すわけにもいかない。でも・・・。

母親とその子ども。こどもは親のもちものではもちろんないけれど、一個の人格だと突き放すにはまだはやい。教えたいことはたくさんあるけれど、じぶんで考えてほしいこともたくさんある。そんなとき、表題の言葉で母親は自問する。そして、大人になったわが子を想像して、ほろりとする。子どものことを思うとき、それは必ず自分への問いかけとなってかえってくる。だって、「あのときわたしはあなたで、あなたはわたしだった。」から。

 

この本で綴られる母親の視線は、いつでも子どもの未来に向かっている。子どもと自分を結ぶ糸を、ことあるごとに確かめている。たぶん、気を抜いてしまうと見えなくなってしまうほど繊細なのだ。自分のことにかまけて、何かをできない言い訳をしてしまうと、すぐにどこかへいってしまうようなものなのだ。そのことがわかっているから、時々立ち止まって娘を見て、自分を内省する。大切に育てたいという母親の繊細な気持ちが伝わってくる。とまどい、反省し、娘をじっとみつめ、そして、抱きしめる。子育てはかけがえのない営みなのだと感じさせてくれた。心の揺れ動きが伝わってくる文章が素晴らしい。絵もまた、その精細な想いをやさしく表現している。

愛情ってたぶん、こんなにもろくて、切なくて、堂々めぐりで、自罰的なものなのだと思う。それは母親と子どもの関係に限らない。大好きな人やものとの付き合い方もまた、もろくて、切なくて、堂々めぐりで、自罰的なものなのだと思い出させてくれた。

My Child わたしの子

My Child わたしの子