Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

映画 日々是好日

ずっと観たかった映画をようやく録画で観た。コロナの、こんな時期に観てよかったと思う。お話はごく普通の、したいことが何かわからない女子大生が、ふとしたことで茶道教室に通うことになるところから始まる。あ、その前に小学生の頃に両親に連れられてフェリーニの「道」を観にいき全然わからなかったよというのがオープニングだ。一緒に教室に通いはじめた仲のよいいとことともにゼロから茶の湯を学んでいく。そのいとこが商社に就職し、自分は就職できずフリーライターになり、そのいとこが結婚して遠くへ行ってしまい、自分は結婚の約束を交わした彼氏に裏切られたりと、いろんなことが彼女の身に降りかかる。とは言っても、それは普通に暮らしていても出会う出来事だ。

淡々と過ぎていく時間の中で、彼女はずっとお茶の教室に通う。最初はなんとなく行っていただけだったのに、すっかり生活の中の習慣になっていたから。あるときから彼女は一人暮らしを始める。それでも土曜日の茶道教室の帰りには実家に寄ることにしている。ある日、父が倒れ、そのまま帰らぬ人になった。喪服のまま、お茶の先生の家に行き、縁側で先生と話をする。お茶の時間と先生の家で過ごす時間が、彼女がやすらぐための時間なのだ。

翌年の初釜の日、門下生の前で先生は言う。「こうして毎年同じことができるとこが幸せなんだなあって」。彼女はここに通うようになって、三度目の犬の絵柄の干支の茶碗と対面する。つまり二十四年通っているのだ。そして彼女は、扁額の「日々是好日」の意味を理解する。四季折々の時間や気候をそれぞれに楽しみながら、何気ない日常の時間を味わうように生きることだと。「世の中にはすぐにわかるものとすぐにわからないものがある。すぐにわからないものは長い時間をかけて少しずつわかってくる」

私も日常が続くということはどれほどありがたいことなのかとなんだか心にしみた。

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