さきちゃんとお母さんの12の短いおはなしの連作集。小学三年生のさきちゃんのお母さんはお話を作る仕事をしていて、さきちゃんは寝るまえにふとんに入ってからお母さんに話をしてほしいとせがむ。お母さんは「この話に出てくるのは誰だと思う?」と問いかけ、さきちゃんが「くまさん」と言うと「よく分かったね。じゃあどんなくまさんだと思う?」と娘の要望を聞きながら話を作っていく。
お母さんは、さきちゃんの目線で想像するのがとっても上手で、聞き間違えたりすると、それはきっと昨日聞いたお話のせいだなとわかってあげて、全力でさきちゃんの想像力を受け止める。この母と娘はそうやってしっかりと日々を暮らしている。
世のお母さん方は、こういうことをずっとしているんだろうなと、思ってしまう。この小説が日常のやりとりを上手にくみ取ってくれているからだ。
挿画がかわいい。表紙から頁の中までこの小説の世界観がずっと広がっている。