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本や映画、音楽、日々の雑感

テレビ 仁

おっと、このブログを一ヵ月も書いてなかったことに自分でも驚いた。この自粛ムードの中で本を読むよりもこつこつと翻訳と外出しなくていい仕事を続けていた結果だ。

テレビドラマの仁の再放送をまとめて観た。三週連続で土曜と日曜の2時から5時まで連続放送してくれたのでじっくりとそして初めて観た。一回の放送の三時間に、以前の放送の4、5話分を編集しているために実に内容の濃いドラマになった。

現代の日本の外科医が幕末の日本へタイムスリップする。わずかに携行した手術道具と現代医学の知識を元に、必要な道具と薬を手作りし、当時の人々の命を救う。そして自分は歴史を変えてしまうのではないかと葛藤しながらも医者として眼の前にいるけが人や病人の命を助けようと努力する。そしてとうとう自分がいた時代に戻ることになるのだが、以前とは少し違っていることに気づく。それは自分が歴史を変えたせいなのか、わずかにバージョンの異なるパラレルワールドに来てしまったのか。タイムスリップという大きなアイデアなのだが、詳細な外科手術の演出や観ているものを納得させる辻褄の合わせ方が上手く、よくできたドラマだ。

途中、自分が歴史を変えてしまった暗喩として写真に一緒に写っていた恋人の姿が薄くなり、しまいにはその写真までが消えてしまう。分かりやすいギミックである。恋人とそっくりの女性に出会い、その人の運命を変えてしまったからなのだろうか。そしてもう一枚の写真がある。坂本龍馬と一緒に写った写真だ。この写真が出てくる物語の後半では、視聴者は歴史の中からその医師が消えてしまうことが推測できる。あの有名な龍馬がひとりで写っていた写真の隣に、かの医者が一緒に写っているのだから。確かに龍馬の写真は、隣に誰かいたような気配を感じさせるのだ。この写真が仁のドラマを発想する手がかりになったのかもしれない。龍馬の隣に(本当は一緒に写って)いたはずの人物は誰だろうと考えたのでは。そして、その人物は未来からやって来て、成すべきことをして、また未来に戻っていったのではと。そもそも、坂本龍馬という人物もまた、幕末のわずかな期間に獅子奮迅の活躍をし、この世から消えていった。彼もまた、未来から日本を変革するためにやって来たのかもしれない。

この物語の第一話がころりという伝染病にかかった人々を治すというストーリーだったせいもあって、新型コロナで活動自粛中の心に深くしみいったのかもしれない。とてもいいドラマだった。大沢たかお綾瀬はるかがとても良かった。恋人役の中谷美紀もはまり役だった。