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本や映画、音楽、日々の雑感

ドラえもん0巻

朝日新聞三谷幸喜のコラムを読んで、ドラえもんの単行本を買う。これは、「よいこ」「幼稚園」「小学一年生」「小学二年生」「小学三年生」「小学四年生」それぞれの、ドラえもんの第1回がまとめて掲載されている。ドラえもんのび太の家にやって来る回なので、基本は同じ話なのだが、対象年齢によって描きわけてある。絵のタッチや台詞そのものと漢字の量などが違う。これはなかなかできる芸当ではない。漫画家や作家は、本来自分の世界観を最も表現できる作品を書きあげるのではないだろうか。もちろん、想定とする読者がいるにせよ、自分の考えを表現することが仕事というか作品作りなのではないか。それなのにドラえもんの作者は、媒体の想定年齢に合わせて描きわける。子供たち誰もが読みたい作品でありながら、読者は自分の学年にあった雑誌しか見ないわけだから、こうなるのだろうが、凄い努力だなと感心した。今では雑誌自体がなくなってしまったが。

三谷幸喜が言及していたのは、巻末に収められた、ドラえもんのアイデアが誕生するまでの苦悶の日々のマンガだ。締め切りぎりぎりまでアイデアが浮かばない。良いアイデアが思いつかずあせる。場所を変えて考える。横になって考えようとすると、そのまま寝てしまう。はっと起きてはまたあせる。そして最後の最後にひらめく。たしかにこれは、アイデアを考えなければならない人は誰もが経験したことだ。広告の世界でも「白紙で出た(新聞)原稿はない」などと言われたが、それでも綱渡りの日々を過ごすのはキツかった。

考えてみたら、ドラえもんの単行本を買ったのは初めてだ。0巻という本が、本棚にあるのは悪くない。

ドラえもん 0巻 (0巻) (てんとう虫コミックス)

ドラえもん 0巻 (0巻) (てんとう虫コミックス)