Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた。

この雑誌とは「マンハント」のことだ。1958年から1963年まで、アメリカの雑誌「manhunt」の日本語版として、ミステリーなどを紹介したA5サイズの雑誌だ。新刊で売られていた当時のことは、もちろん知らないのだが、ミステリー雑誌の草分けだという、この雑誌の存在は知っていたから、大学時代に神保町の古書店で一冊買ったことがある。今も書棚のどこかにあるはずだ。学生の頃はミステリーマガジンを読んでいたし、ハードボイルド小説が好きで、古書店でペイパーバックを買いあさっていた。手に入れたマンハントは、そうとうに古びていて、そっと開いて眺めただけだったから、どんな人たちが書いていたのかまで、分析することはできなかった。手に入れただけで満足したんだと思う。

この本を読んでわかったのは、そうそうたるスタッフがこの本に関わっていたということだ。私の好きな片岡義男の他にも、植草甚一小鷹信光湯川れい子都筑道夫田中小実昌中田耕治矢野徹など、学生時代に好きだった作家が勢揃いしている。

この雑誌は「新青年」というさらに以前出ていた雑誌の後継を目指したという話が出てくるが、さすがに新青年のことは知らない。ヒッチコックマガジンを若き日の小林信彦が編集していたことは知っていたが、ハードボイルドかぶれの私は、そちらにはあまり関心がいかなかった。マンハントが、新しい翻訳文体を作りだしたことやカラーグラビアのことなど、へえー、と言いながら、学生自体を思い出して楽しんだ。平野甲賀の装丁もかつての晶文社の単行本そのそもので、なんだか嬉しい。

著者の鏡明は、SFの人で、広告業界の有名人でもあるというくらいしか知らなかったけれど、おもしろい文章を書くのだなと思った。お会いしたこともあるのだけれど、言葉を交わしたことはなかったな。

 

ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた

ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた