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映画 バイス

これもアカデミー賞作品の一つで、ずっと観たいと思っていた。面白かったけど、映画を観ながらアメリカのことに詳しければ、もっと面白がれるのだろうと感じた。私は副大統領のことはあまり意識したことがなく、映画の中でも言っていたが、大統領が死んだ時に大統領になる人くらいにしか認識がなかった。ディック・チェイニーアメリカの法律の解釈によって、職域というか権限を変えたのだ。チェイニー以降は副大統領が大統領権限を自在に操ったことはないようだが、法解釈によって大統領の権限などを拡大しようというやり方は、大統領候補に名乗りを上げるような人や、ホワイトハウスのスタッフなどには当然の知識なのだと思う。新しい大統領が、自分のスタッフを総取っ替えして、自分にとって都合の良い人選をするのは、トランプはもちろん、日本の総理も同じなんだろう。政治は民主的に行われるわけでも、合理的に効率的に進められるわけでもなく、大統領とそのスタッフが自分たちの考える世界を築き上げていく行為なのだと思う。大統領になった人の倫理観や価値観にアメリカを通した世界の秩序がゆだねられるということなんだと思う。

この映画にはまた、映画的な遊びの要素がたくさん入っていた。まずは謎の狂言回し。中盤でどういう存在なのか明らかになり、メインストーリーの一部に取り込まれて行く。そしてシェイクスピア風にやってみよう、という狂言回しの言葉にしたがって、シェイクスピア劇が始まり、レストランでメニューを読むように政策のアイデアが読み上げられる。観客を楽しませようとする様々な要素がはいりこむのは、現代的なテクニックなのかもしれない。JFKのようなスタイルの映画は作りにくいのか、つまらないと思っているのか。

それにしても、登場する俳優がみな実在の人物によく似ている。チェイニーもブッシュも、他の登場人物も本当にそっくりだ。その時点ですでにコメディの予感がする。

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