Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

旅猫リポート

ふだんは手にしない作家だが、読書会の課題図書なので読んでみた。なかなかのページターナーで、あっという間に読み終えた。とてもよかった。主人公はやさしい青年で、ある事情があって飼い猫を友人に引き取ってもらうため、車に猫を乗せて会いに行く。その友人は幼なじみで、久しぶりの再会だ。旧交を温め合う二人だが、猫をひきとってもらうことは出来ないと判断し、また別の友達の街へと猫と一緒にドライブしていく。そしてまた、猫は引き取ってもらえないとわかり、また次の友人のもとへ。その課程で、主人公の生い立ちがしだいに明らかになり、猫を預けなければならない事情もわかってくる。

猫が語る部分があるのだが、そういうことを考えているかもなあと思わせる。そうあってほしい、と人間が思っているだけかもしれないが、動物を飼っている人なら共感すると思う内容だ。後半にはいるころには、すっかり主人公にも猫にも共感してしまった。そして悪人の出てこない小説だ。私にとって新鮮な読書体験だった。

 

旅猫リポート (講談社文庫)

旅猫リポート (講談社文庫)